第7話

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2022/09/04 09:22


  気づけば強まってきた雪 。


  止まることを知らない涙が
  次々に私の頬を濡らす 。

  きっと鼻先と耳は寒さで赤いだろうし 、  
  手は動きがぎこちなくなるほど冷えてる 。


  でもそんな中 、
  彼の胸の中は暖かくて 、
  甘えてしまう 。


高橋 「 雪村さん 、手 、冷えてる 。
     もう遅いし 、帰って温まった方がええ 。」


  私を離すように離れて行く彼の手 。

  温もりが消えた私の前に
  急激な切なさだけが残る 。


あなた 「 … っ 、ごめん 、なさい 。 」


  それと同時に我に帰る 。

  こんな年になって 、
  人前でこんなに涙を見せるなんて 。

  それに 、高橋くんの制服は
  私の涙で濡れている 。


高橋 「 気にせんで 。
     ほら 、家どのへん ? 送る 。」


  多分断っても着いてきてくれるんだろう 。
  黙って高橋くんの隣に並び 、

  少しずつ雪に覆われ
  白くなっていく道を歩く 。


  高橋くんは何も喋らない 。
  私も口を開かなかった 。


あなた 「 ここ 、わざわざありがと 。
    それと 、色々巻き込んでごめん 。 」


高橋 「 別に 、自分から
     巻き込まれに行った様なもんだしな 。

     もう泣くなよ ? 
     ちゃんと体冷やして … 、ん? 」


  すぐそこに私の住むマンションがあって 、
  そこに入ったらまた一人になって 、

  きっと今日は眠れない 。


  つい 、彼の裾を引っ張ってしまう 。


あなた 「 まだ 、このままじゃ 、
    夜たくさん泣いちゃうよ 、わたし 、」


  何 、言ってるんだろう 。
  こんなこと言って 、困らせるだけなのに 。
  彼が今夜横にいてくれるわけじゃないのに 。


  彼の手が私の頬にそっと触れる 。
  大きくて 、冷たい 。
  私のせいでずっと外にいたからだ 。


高橋 「 あいつじゃなくて 、
     俺を思い出せばいい 。」




  視線が交わった 。
  彼の手から傘がすり抜け音を立てて落ちる 。
  




  こんなにも冷たい手をしてるのに 。

  彼の唇は熱を帯びていた 。

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