気づけば強まってきた雪 。
止まることを知らない涙が
次々に私の頬を濡らす 。
きっと鼻先と耳は寒さで赤いだろうし 、
手は動きがぎこちなくなるほど冷えてる 。
でもそんな中 、
彼の胸の中は暖かくて 、
甘えてしまう 。
高橋 「 雪村さん 、手 、冷えてる 。
もう遅いし 、帰って温まった方がええ 。」
私を離すように離れて行く彼の手 。
温もりが消えた私の前に
急激な切なさだけが残る 。
あなた 「 … っ 、ごめん 、なさい 。 」
それと同時に我に帰る 。
こんな年になって 、
人前でこんなに涙を見せるなんて 。
それに 、高橋くんの制服は
私の涙で濡れている 。
高橋 「 気にせんで 。
ほら 、家どのへん ? 送る 。」
多分断っても着いてきてくれるんだろう 。
黙って高橋くんの隣に並び 、
少しずつ雪に覆われ
白くなっていく道を歩く 。
高橋くんは何も喋らない 。
私も口を開かなかった 。
あなた 「 ここ 、わざわざありがと 。
それと 、色々巻き込んでごめん 。 」
高橋 「 別に 、自分から
巻き込まれに行った様なもんだしな 。
もう泣くなよ ?
ちゃんと体冷やして … 、ん? 」
すぐそこに私の住むマンションがあって 、
そこに入ったらまた一人になって 、
きっと今日は眠れない 。
つい 、彼の裾を引っ張ってしまう 。
あなた 「 まだ 、このままじゃ 、
夜たくさん泣いちゃうよ 、わたし 、」
何 、言ってるんだろう 。
こんなこと言って 、困らせるだけなのに 。
彼が今夜横にいてくれるわけじゃないのに 。
彼の手が私の頬にそっと触れる 。
大きくて 、冷たい 。
私のせいでずっと外にいたからだ 。
高橋 「 あいつじゃなくて 、
俺を思い出せばいい 。」
視線が交わった 。
彼の手から傘がすり抜け音を立てて落ちる 。
こんなにも冷たい手をしてるのに 。
彼の唇は熱を帯びていた 。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。