第3話

Episode 3
361
2019/07/16 09:50
「…大野先輩っ。」
「…何?俺に用があったの?」


温度のない目。それは、朝、向けられたものと何も変わっていない。
でも、決して嫌われてるとか、拒絶されてるわけではない。


とはいえ。
用があった、というのは微妙に違う気がした。考えなしに、無意識のまま、ここまで来てしまったから。


「…あ、えっと、ですね…。」
「…まぁ、立ち話もなんだし。嫌じゃないならついてきたら。」


クルリ、と背を向けて歩き出す先輩。
ついてって、良いんだよね…。


(あれ…)


大野先輩、歩くスピード、朝より遅くない?
もしかして、私に合わせてくれてる、とか…?いや、それはないか。


そんなことを考えながら、後ろを歩いていると、大野先輩はやがて止まり、授業ではもう使われていない美術室に入った。


「大ちゃん、遅かったね。って、あれ、その子…。」


(櫻井先輩っ?あ、他の人達もいる…)


固まっていると、大野先輩が迷惑そうに顔を歪ませ、グッと腕を引き寄せられた。

見かけによらず(失礼)、強い力。
…男の人って感じで、ちょっとドキッとしてしまった。


「さっさと入るなら入って。面倒な人達が来るのはゴメンだから。」
「すいません…。」


シュン、と俯き謝ると、大野先輩のため息がそばで聞こえた。


「…謝ってほしいわけじゃない。っていうか、謝られてすぐ許すくらいなら、言わないから。」


…確かに、と納得してしまう。
どうやら、大野先輩はすぐ謝るようなのは好きじゃないらしい。


「で、大野さん、その子は?」
「あぁ、この子は…」
「彼女っ?大ちゃん、やるね!」


(かっ、彼女っ…!?)

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