第13話

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2019/03/11 14:37
あの日
りこ
えいちゃん!
えいじ
りこ、どした?
りこ
放課後遊びに行こう!
えいじ
いいじゃん、そうしよ
毎日欠かさず連絡を取り合ってた俺達。

付き合ってるわけじゃないけど

密かに俺は好意を寄せていた。



放課後、隣の学校から俺に向かって

満面の笑みで走ってくるりこが見えた。
りこ
えいちゃんー!
手を振りながら無邪気に来るのを

俺は校門で待っていた。





えいじ
りこ!
手を挙げると、その途端にりこの姿が消えた。

そして、同時に赤い果実の汁が飛び散り

アスファルトの上も赤く染まっていた。


時間が止まったかのように硬直する俺と、まだ蕾の桜の花。
走って駆け寄ると

そこには、見るに耐えない姿になった

りこがいた。


トラックは慌てて去り

田舎というのもあって

人気が一切なく

俺とりこだけの空間のように感じた。



状況を理解し始めると

無意識に救急車と警察を呼んでいた。


隣町の病院まで行くと

俺は頭が真っ白になった。

いや、真っ赤になった。


「手は尽くしたのですが…」




俺が殺したんだ。

りこのことを…。
人を好きになり過ぎると

消えた時に哀しさが耐えなくなる。

人を信じ過ぎると

頭から一生離れなくなる。




あの日実るはずだった小さな桜の蕾も

あっけなく散ってしまった。




もう、人を好きにならない。

もう、人など信用しない。

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