第27話

この想いに花束を。Y
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2023/04/04 03:45












藤井直樹
藤井直樹
ごめんね。俺、あなたちゃんとは友達でいたいな

































初恋の相手に、そう言われた












中学まで1度も恋をしたことがなかった私が、高校に入って恋をした







水族館に誘って思い切って告白したけど、駄目だった


ただ、それだけなのに






それだけなのに。
































あなた
っ…



思い出せば思い出すほど、涙が止まらない







あなた
うっ…




































那須雄登
那須雄登
大丈夫?
あなた
ぁ…
那須雄登
那須雄登
あなたちゃん。
あなた
那須くん、…
那須雄登
那須雄登
よかったら飲んで。あったまるよ。







そう言ってクラスメイトの那須くんが差し出してくれたのは、ホットココア


















あなた
ありがと、
那須雄登
那須雄登
いいえ。
どうしたの?休みの日に、こんなところで。






那須くんが「こんなところで」と言ったのにはしっかりと理由がある





なんといっても、ここは学校




私服で学校とかおかしいよね。しかも泣いてるわけだし















あなた
簡単に、言うとね
あなた
今日、藤井くんと水族館に行ってきたの。そこで告白したんだけど、振られちゃって…
このまま家にも帰れないし、だからといって外で泣くわけにもいかないから、たまたま開いてた学校に侵入したってこと。笑
あなた
ごめんね、変な奴だよね、私。
あなた
ホットココア、ありがとう。







そのまま教室をあとにしようとすると、那須くんが私の腕を掴んだ












那須雄登
那須雄登
泣きたい分だけ泣けばいい。
あなた
…え、?
那須雄登
那須雄登
俺以外誰もいないし。俺なら受け止めるし。
あなた
っ…
那須雄登
那須雄登
いいよ。いーっぱい泣きな。


























泣きやむまで、那須くんはずっと私の背中をさすってくれていた











あなた
もう、大丈夫。ありがとう。
那須雄登
那須雄登
ほんと?ならよかった。
あなた
…というか、那須くんはなんで学校にいるの?
那須くんも私服だし…
那須雄登
那須雄登
ふふ、じゃあこっち




那須くんが連れて来てくれたのは、3年生の教室
















那須雄登
那須雄登
来週3年生は卒業でしょ?
先生から花束の購入頼まれてて。
那須雄登
那須雄登
買ってきたやつを飾ってたんだよね。
あなた
そうなんだ。
あ、この花、紫と黄色で可愛い。
那須雄登
那須雄登
それあげるよ。
あなた
え?
那須雄登
那須雄登
1束多く買っちゃったんだよね。だからあげる。
あなた
え、でも、
那須雄登
那須雄登
ちょうどいいしね。
あなた
ちょうどいい?
那須雄登
那須雄登
その花の名前知ってる?
あなた
ううん…
那須雄登
那須雄登
クロッカスっていうんだって。





那須雄登
那須雄登
花言葉は「切望」「青春の喜び」
那須雄登
那須雄登
黄色いクロッカスは「私を信じて」








あなた
私を信じて…?
那須雄登
那須雄登
あなたちゃん
那須雄登
那須雄登
今から言うこと、信じてほしい。
あなた



那須雄登
那須雄登
あなたちゃんが好き。
那須雄登
那須雄登
この気持ち、信じてくれる?








青春の喜び




切望








今、私が強く願うこと




















あなた
私も、那須くんが好き…
あなた
那須くんズルいね、たった20分で、笑
那須雄登
那須雄登
俺は20分じゃないけどね。笑
那須雄登
那須雄登
高校入学してからずっとだったよ?
あなた
その言葉、信じていいの?
那須雄登
那須雄登
信じてほしいな。笑
あなた
じゃあ、裏切らないでね。
那須雄登
那須雄登
裏切るなんて、まさか。笑





私の頬にそっと手を添えた那須くん



目を瞑った私
























あれ…?



もしかして、キスしない?








あなた
…しないの?
那須雄登
那須雄登
いや、目瞑ってるの可愛いなって。
あなた
…じれったい。








微笑んだ彼に、私から優しくキスをした






























クロッカスの花言葉


・切望

・青春の喜び

・私を信じて

・私を裏切らないで

・じれったい













一生忘れることのない恋をした。



それは甘酸っぱい初恋でもなく、先生との禁断の恋でもない。







花束をくれた、優しくて笑顔が似合う君との恋。





























この想いに花束を。end

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