第32話

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2020/06/25 00:00
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紫耀side



コンビニから車に乗って再び走ること5分

なんとなくお互い無言のまま、

車内ではあなたの好きな曲が流れる



気まずいような沈黙ではなかったが、

先にそれを破ったのは俺の方だった



紫耀「明日、学校?」



なんて、特に中身のない他愛もない日常会話



あなた「…ん?えっと…そうだよ」

紫耀「俺、明日オフなんだよね」

あなた「そっかー…ゆっくり休めるね…」



確信した



紫耀(休んだ方がいいのはあなたの方…)



でも、あなたに体調を聞いたところで

「元気」とか「大丈夫」とか言われるだけ

聞くだけ無駄だと言うことも又確信していた




────




あなたside



あなた(やば…ほんとに頭痛い)


車中、頭痛に襲われていた私

大好きなバンドの曲でさえも煩く感じる程に


もう、頼ってもいいかな


「きつい」の一言を言いたいだけだったが、

「仕事終わりで疲れてるかも」が頭を過ぎる





しかしそれ以降、酷い頭痛のせいで


彼を顧みる余裕は余りなかった




音楽消していいかな────


そう言おうとした途端、



車内が静寂に包まれた




音楽を消したのは、彼だ




運転席の紫耀くんを見ると、心配そうな瞳と私のそれが合う

そして、辛く苦しそうにこちらを見て言った




紫耀「頼ってよ…」







《ズキン》






胸が、痛かった





彼が私を心配してくれていたことは分かっていたのに

頼らなかったのは、弱音を吐かなかったのは


彼の迷惑や、重荷に

少しでもなりたくなかった


ただ、それだけ






でも、そのせいで


彼にあの表情 カ オをさせてしまったのだとしたら



胸に刺さった痛みは、私のものではないような気がした





そしてその痛みと共に確信に変わったこと、




彼は、いつも誰かを大事に、

誰かを思って行動できる人だ



その誰かに、私も例外ではないということ




彼が私のことを、好きだとか嫌いだとかではない





ただ、私は"間違い"を選んでた────







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