☆0☆
〜〜〜♪〜♪〜♪〜
旋律に乗せた言葉は…魔法だ。
〜♪〜♪〜♪〜〜〜
☆1☆
彼女がいると知ってから…
私は、彼と距離を置く事にした。
親「元気 出しな!」
親友は、そう言うけど…
元気 出してどうするの?
このあいだの日曜日。
近くのモールのアクセサリーショップで、
偶然、見かけてしまった。
彼女と思われる女の子と彼が、
楽しそうに…
私…結構 上手くいってそうだったのにな…
読みは外れてしまった。
いつもと違って、話しかけてこない私を、
彼は変に思ったのか…
神「どぉない〜したんっ?(笑)」
ワザワザ隣の教室から、
いつもと変わらない笑顔で話しかけてくる。
〇「なんでもない…」
今は、触れて欲しく無いんだよ…
そんな気持ちも知らないで、
前の席に こっち向きで座ってくる。
神「なんかあったなら、話してや。」
その態度に、イラッとしてしまった。
☆2☆
〇「好きな人に彼女がいたの!ほっといてっ!」
彼はまるで、自分が傷ついた様な顔をしていた。
神「・・・好きなヤツ居ったんか…」
そう言うと、いなくなった。
なに?
私は人を好きにならないとでも思ってたの?
イライラが募っていった。
想いを伝えられずに、終わってしまった恋は、どうしたらイイの?
先週までは、ウキウキしていた。
だって…
神「彼氏から誕生日プレゼントもらうなら、なにがええ?」
なんて、聞いてくるんだもん。
そんなの、勘違いするなって方が間違ってるよ!
あの彼女へのプレゼントの事だったのか…
もぉ〜どぉでもイイや…
親「〇〇?カラオケでも行くか?」
〇「う〜ん?」
私はこの怒りを、どこかに ぶつけたかった。
〇「行く!」
なんて、言わなきゃ良かった…
☆3☆
親「ねぇ〜シゲ〜あれ歌ってぇ〜」
シ「オッケー!お前らーッ!タオル出せーッ!」
リア充達の大暴れに 巻き込まれた。
♪あがっちゃってこ!イェイッ!
さわいじゃってこ!イェイッ!♪
新「〇〇も、タオル回して!」
んもぉぉぉぉ〜〜
しゃーないなぁーッ!
シ「行きまっせーーーーッ!ブンブンブブ〜ンブ〜ン!」
「「ブンブ〜ン!♪♪」」
シ「とぉ〜んでとんで!ブンブンブブ〜ンブ〜ン!」
「「ブンブ〜ン!♪♪」」
やっぱり…
来て良かった。
私はライブさながら、はしゃいだ。
親友って良いもんだな。
なんて、勝手だけど 思った。
シ「神ちゃんに彼女が?まさかぁ〜」
親友の彼氏のシゲは、彼と同じクラス。
〇「だって見たんだもん…」
シ「見ただけやろ?」
思い出したくも無かった。
☆4☆
〇「楽しそうにしてたもん…」
シ「どんな風にや?」
〇「なんか…寄り添ってた感じ…」
シ「手は?繋いどった?」
〇「う〜ん??分かんない…」
シ「なんでや?見たんやろ?」
〇「そんな事 言ったって ショックで…ずっとなんて見てられなかったんだもん…」
私は、どんどん テンションを下げられ、
やっぱり、来なきゃ良かったと思っていた。
次の日。
神「〇〇?あのさ…」
朝から彼に話しかけられ、
〇「なに?なんか用?!」
と、冷たく返してしまった。
好きな人と距離を置こうとしてる人に、
そんな簡単に話しかけて欲しくなかった。
でも彼は、そんな私の気持ちなんて、知るはずもない。
神「放課後さ…」
その上、
神「音楽室に来て。」
訳も分からない誘い。
神「待っとるから。」
なんで、そんな事 言うのよ…
〇「ごめん、行かない。」
彼はうつむいた。
☆5☆
神「でも俺…ずっと待っとるから。」
と、真剣な眼差しで、私を見つめた。
そのうち、顔を真っ赤にして、隣の教室へ戻って行った。
涙が溢れた。
バカッ!!!バカッ!!!
神ちゃんなんて!!!
もう……………………
大っ嫌いッ!!!!!!
私は心の中で、嘘をついた。
自分をかばう為に…
☆6☆
放課後。
そそくさと帰ろうとする私を、引き止めた人がいた。
シ「神ちゃん 待っとるんやろ?」
〇「えっ?!!!なんで…」
なんで、知ってるの?
親「ごめんね、私…〇〇と神ちゃんの朝の会話、聞いてたの。」
シ「ええんか?後悔するぞ。」
〇「だって…」
だって…
私だって…行きたいよ…
心で「大っ嫌い!」って言っちゃうほど…
大好きだから…
でも…
怖い…
〇「彼女いる人に呼ばれて行ったって、傷つくだけじゃん!!!辛いのヤなの!!!」
親「じゃあ、なんで泣いてたのよ!好きだからでしょ?!伝えてあげなよ、好きな気持ち。じゃないと……その恋、迷子になっちゃう…でしょ?」
言い終わる頃には、私のかわりに泣いていた。
親友って、いいもんだな…
また勝手に、そう思った私は、
親友の言葉に背中を押された。
〇「分かった。」
私は、この恋を ちゃんと終わらせる為に、
決意した。
☆7☆
…『神ちゃんなんて大っ嫌い!!!』
そう言うんだ…
音楽室まで、心の中で何度もイメトレした。
心臓の音が 早まる。
ドアに伸ばす手が 震える。
ふと聞こえた ピアノの音…
私は その音に吸い込まれ、
グランドピアノを叩く 彼の隣に座った。
この曲…
一週間前。
神「彼氏から誕生日プレゼントもらうなら、なにがええ?」
〇「う〜ん?身につけるものがイイかなぁ〜?ネックレスとか!」
神「〇〇の、一番好きな曲って何?」
〇「私は〜WESTの〜」
あの時…私が答えた…
『きみへのメロディー』
☆8☆
♪〜好きだよ ねぇ好きだよ 君のことが
一言が言えずにいたけど…
いまほら 全てを伝えよう
かけがえのない人へ…
あきれるくらいの きみへのメロディー
ふたりなら奏でられるはず…
一緒にまた歩んで行きたい
この手は握ったままで 離さないから〜♪
彼の歌声は、とても透き通っていて…
止まらない…
涙も、
好きも…
でも…
うつむいて泣く事しか出来ない。
神「すきだよ。」
〇「・・・えっ?」
時が止まった。
いま…なんて?
☆9☆
神「やから…」
彼は体をこっちへ向け…
神「好きだよ。」
チュッ!
〇「・・・え…」
そのまま、私は抱きしめられた。
突然の事で、頭が回らない。
けど、顔が赤くなっていくのは分かった。
神「彼女おるヤツなんて忘れろ。
_____俺の傍に居ろよ。な?」
彼の言葉に、また涙が溢れた。
私が、彼の胸で 小さくうなずくと、
ギュッと強く 抱きしめ返された。
☆10☆
〇「ねぇ、神ちゃん?」
神「ん?」
やっと顔を上げた私の言葉を聞きながら、
彼は涙を拭ってくれた。
〇「私も…」
神「え?」
困り眉になって、顔を覗き込む彼は、
とっても可愛い。
〇「2番も聞きたいな(笑)」
神「…ええよぉ〜(笑)」
彼の歌声は とても透き通っていて…
私の心の中に、染み込んでいった。
『大っ嫌い!』なんて、少しも考えなくなり、
彼が歌う『すきだよ。』で溢れていった。
それはまるで、魔法のようだった。
全てが愛おしくて守りたい。
私の全てで。
『ねぇ…すきだよ。』
☆fin.☆
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。