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第2話

入団試験
あなた

こっ…ここが、MANKAIカンパニーの寮…

見た感じ、普通よりは結構大きいけど、普通の家っぽい。
私はフードを深くかぶり直して、息をいっぱいに吸って叫んだ。
あなた

頼もーーーー!!!!!!!

いづみ
いづみ
うひぃぁ?!なっ、何事ですか?!
あなた

あ…

いづみ
いづみ
…どちら様ですか?うちにご用かな?
中から茶髪の女の人が飛び出してきた。二十代前半くらいの、若くて派手じゃないけど綺麗な人だった。
あなた

ぼっ…僕、ここの、MANKAIカンパニーに入りたいんです!下っ端でもいいです!お願いします!

いづみ
いづみ
え…っ?本当に?
あなた

ぼ、僕は本気です!

いづみ
いづみ
…そっか。うん、ちょっとまっててね
女の人は何か納得したように、ぱたぱた寮の中に入って行った。
しばらくして、女の人ともう1人、金髪の男の人が出てきた。
いづみ
いづみ
遅くなってごめんね。わたしは立花いづみ。ここの主宰兼、総監督です。で、こちらが…
左京
左京
古市左京だ
左京さんは、もちろん舞台で見たことがある。眼鏡が知的で、素敵。多分(?)カンパニー最年長だと思う…(年齢不詳を除いて)
あなた

あっ、私…僕は花咲あなたです。花咲学園高等学校1年生です

いい偽名が思いつかなかったし、あとあと面倒そうだから本名を名乗ったけどバレないかな…心配。
いづみ
いづみ
じゃあ、あなたくん、劇場で簡単なオーディションをするから、ついてきてくれる?
あなた

えっ、いいんですか?!こんな早朝に…

いづみ
いづみ
日曜日だしね。それに、早い方がいいでしょ?
あなた

は、はい…!

少し歩いたところに、MANKAI劇場があった。少し古いけど、この味が私は好き。
いづみ
いづみ
さてと、じゃあもう一度、簡単な自己紹介をしてもらえる?
あなた

えと、花咲あなたです!演劇経験はゼロです。花咲学園高等学校1年生で、背が低くて声が高いのが特徴です!

いづみ
いづみ
あはは、特徴って…自分で言っちゃう?
左京
左京
うちの劇団を志望した理由はなんだ?天鵞絨町にはもっと大きな劇団だってあるだろう
あなた

それは…。ここの、MANKAIカンパニーの公演を観たときに、ハッとしたんです。ひたむきなお芝居が、まっすぐな気持ちが全部僕に流れ込んできて。こんな気持ち、どこでも感じたことなかったんです。だから、僕もここでお芝居がしたいんです

そのとき、いづみさんと左京さんが少し笑ったように見えた。
いづみ
いづみ
じゃあ、わたしが言うセリフを入れて、即興劇をしてみてね。じゃあ…「合格したってさ」「山田くん」「お腹すいた」
左京
左京
お前のそのチョイスはなんだ…
いづみ
いづみ
いいじゃないですか。最後のはわたしの本音です
左京
左京
ったく…帰ったら飯だ、我慢しろよ。審査中に腹の虫鳴かすんじゃねえぞ
いづみ
いづみ
さ、じゃああなたくん、やってみて!
あなた

はっ、はい!

(どうしよう…山田くんって、誰?!)
言われるがままにやってみる。
あなた

あ、あーあ、試験落ちちゃった。追試だよぅ…ん、電話だ

ポケットからスマホを取り出して耳に当てる。
あなた

はい、もしもし…ってなんだ、お前かあ。そうそう、今回の試験難しかったよね。でもさ、山田くん合格したってさ

うんうんそーそー、と1人で相槌を打っているうちに、恥ずかしいっていう気持ちが薄れてきた。その代わりに、私だったらどうするかな、って考えてる。
いづみ
いづみ
携帯電話を使うのって、やりやすくていいんですよね
左京
左京
ああ。一人芝居のうまい躱し方だな
あなた

うん、じゃあね。…あーあ、お腹すいたなぁ。なんか食べてから勉強しよっと

ポケットにスマホを入れながら、自然な足取りで舞台袖へ。
そして、ひょこっとカーテンから顔を出した。
あなた

…どうでした?

なんかふわふわしてる。緊張した後の開放感って本当に不思議。すごく短い、1分もないくらいのお芝居なのに、ちよっとやりきった感。
いづみ
いづみ
左京さん、どうですか
左京
左京
お前が決めることだ、監督さん
いづみ
いづみ
そうですね。あなたくん、ありがとう。それじゃあ、発表します。花咲あなたくんは…
あなた

ううっ…

ドキドキドキドキドキドキドキドキ。
いづみ
いづみ
合格!これからよろしくね!
あなた

へ?!ほ、本当に?!

いづみ
いづみ
うん。さ、詳しい話はまた寮で
左京
左京
さっさとついてこい。こいつの腹の虫が大合唱しねえうちにな
いづみ
いづみ
さ、左京さん!年頃の女性になんてことを…
左京
左京
あ"?まだ小娘の年齢だろうが
いづみ
いづみ
ひ、ひどい…。そんなこと言うなら左京さんだけパイナップルカレーにしますよ!…あ、美味しそうかも
あなた

ふふっ

いづみさんと左京さんは兄妹とか、親子みたいで微笑ましいな。なんて、高校生の私が言うことじゃないけどね。
いづみ
いづみ
さあ、ついたよ。それじゃあ、ようこそ!MANKAIカンパニーへ!
あなた

おじゃまします…

左京
左京
おい、よそよそしくすんな。今日からお前の居場所でもあるんだからよ
あなた

はっ、はい!

談話室に案内されると、美味しそうな卵やバターの香りがふわっと押し寄せてきた。
咲也
咲也
あっ、カントク、左京さん、お帰りなさい!…あれ、その子は?
真澄
真澄
アンタ、また新しい男…?尻軽。でも、好き
綴
真澄っ!あー、監督、カレーじゃないけどいいですか?
至
…あ、死んだ。…あれ、お帰りなさい
シトロン
シトロン
カントク、サキョー、紅茶とコーヒー、どっちにするネ?
千景
千景
おいおい、そこにいる子も気遣えよ。困惑してるじゃないか
一気に6人がわっと喋るから、たちまちぽかんってなっちゃった。
いづみ
いづみ
はいはいみんな、紹介するね。こちら、さっき入団が決定した花咲あなたくん
咲也
咲也
えっ!新入団員…ですか!
真澄
真澄
また、ライバルが増えた…監督は俺のだから
いづみ
いづみ
真澄くん、くっつかないの!
あなた

あっ、花咲学園高校1年生の花咲あなたです、よろしくお願いします!

綴
へえ、花学なのか。じゃあもしかして、真澄とか知ってるの?
あなた

は、はい!真澄先輩はうちの学年からも人気で…

至
さすが真澄
シトロン
シトロン
まさに、最速けんちんネ!
あなた

??最速…??

千景
千景
才色兼備と見た
シトロン
シトロン
ソレダヨ!
左京
左京
お前ら、いい加減自己紹介しろ!花咲が引いてるぞ
咲也
咲也
あっ、そうですよね。初めまして、僕は佐久間咲也です。あなたくんと同じ、花咲学園高校の卒業生なんだ。よろしくね
真澄
真澄
…碓氷真澄。監督は俺のものだから。アンタが近づいたら許さないから
綴
ビビらせてどうする…。えっと、皆木綴っす。脚本家もやってるんだ。よろしく
至
茅ヶ崎至だよ。わからないことがあったらなんでも聞いてね
シトロン
シトロン
イタル、猫をたぶらかせすぎネ。ワタシ、シトロンいうヨ。よろしくダネ
千景
千景
猫をたぶらかせるって茅ヶ崎は猫のプレイボーイなの?猫を被る、ね。初めまして、卯月千景です。よろしく
咲也
咲也
俺たち6人で、春組だよ
あなた

よ、よろしくお願いします…!

そのとき、ぐぎゅるぅ、と形容しがたい音が聞こえた。
いづみ
いづみ
…さあて!朝ごはん食べよう!