和side
教室に戻ってきた転入生は
セーラー服の襟が折れていた。
女子はそれに気づいているのに
クスクス笑って直そうとしない。
何が面白いんだろう?と思いながら
転入生が席に着いたタイミングで
声をかけ、襟を直してあげた。
目を合わせようとしない彼女を見てると
なんか面白くて、笑いながら話しかけると
緊張しているのか、慌てていて余計に笑える。
しかし、俺の顔から笑みが消えた。
暗くて、声が小さくて、地味な彼女が
智と会ったかと聞くと、今まで聞いたことのない
明るい声を出し、少し嬉しそうな顔をした。
その瞬間、今までにない
なんともいえない気持ちになった。
彼女は俺の様子に不思議がりながら前を向いた。
俺は、窓際の1番後ろにある智の席に向かった。
移動教室やトイレの時以外席から離れない俺に
智は不思議がってる様子。
特に用はなかった。
ただ、なんか、転入生の嬉しそうな顔を見た時
その顔になる理由が智だと思うと
嫉妬?じゃないけど、なんかやだった。
だめだな、俺らしくない。
智とは中学から同じで、いっしょにいる。
2人とも1人も好きだけど
なんとなくいっしょにいることが多い。
俺が辛かった時、支えてくれたのは智だった。