中でお団子をつくっていると
お丸ちゃんが私を呼んだ
「どうしたの?」
表へ出ると以蔵が待っていて
私は急いで以蔵の手を引いてお団子屋へ入る
以蔵「あなた」
名前を呼ばれるが構わず奥へと進んでいく
以蔵「あなた、おいあなたっ」
以蔵に手を振り払われて
私は以蔵の方をむく
「以蔵がしたの?」
目の前がぼやける
以蔵は黙ったままだ
「ねぇ、答えて。以蔵がしたの?」
以蔵「違う。俺じゃない」
「じゃあどうしてっ」
どうして次郎吉さんは死んじゃったの?
そう言おうとして以蔵を見上げて
やっぱり言うのをやめた
以蔵も目を潤ませていた
以蔵「ごめんな」
以蔵はただ一言発して
くるりと背を向けた
以蔵「あの兄弟にあなたを外に出さぬよう頼んだのは俺だ。しかし鼠を殺したのは俺ではない。他ならぬ鉄砲組だ」
「あの手紙は?」
以蔵「まだここにある」
以蔵の手には紙が握られていた
それを見て私は足の力が抜けた
以蔵「もう会いに来ることは無いから安心してくれ」
「え?」
以蔵「すまなかった。あなた」
以蔵の顔は見えなかった
でも泣いている気がした
一瞬でいなくなってしまったから
もう確認することは出来ないけれど