夜、お丸ちゃんに連れられて外に出ると
あべぞうも後をついてきた
お丸「あなた、見て」
あそこ、と指さされた場所を見ると
屋根の上に座って遠くを眺めている新吉さんがいた
「ねずみ、こぞう・・・」
その姿は何度もかわら版で見た
鼠小僧の姿そっくりだった
新吉さんは2代目になって
この江戸を守ろうとしてくれているのだと思った
「あ、」
その後ろの暗がりに以蔵の姿が見えた気がした
すぐに屋根から降りてしまったが
きっと以蔵だと思う
一瞬だったけど元気な姿が見れてホッとした
お丸「さ、帰ろうか」
あべぞう「にゃお」
お丸ちゃんの言ったことにあべぞうが返事をする
私もくるりと方向を変えて
お丸ちゃん達と一緒に帰ることにした
ただ、その日はなんだか遠回りしたくて
「ちょっと寄り道しようよ」
なんて
余計な事を口走ってしまった
お丸「最近物騒だから早めに切り上げるわよ」
「うん、ありがとう」
あべぞう「にゃー」
「あべぞうもありがとう」
遠回りと言っても
路地を少し抜けた先に行くだけ
それだけのはずだった
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。