お葬式の準備があるため
私はしばらく
お丸ちゃんの家で暮らすことになった
準備は淡々と進み
当日にはお丸ちゃんが言った通り
江戸中の人が集まった
私はあべぞうを膝に乗せて
1番前に座って写真の鼠小僧を見つめた
あべぞう「にゃお」
「悲しいね」
よしよしと撫でると
少し違うようで手を止められた
あべぞう「んな」
「心配してくれてるの?」
あべぞう「にゃー」
「そっか、ありがとね。私は大丈夫だよ」
あべぞうの頭を撫でると
今度はあっていたみたいで
鼠小僧を見つめた
お葬式が始まると
お坊さんがお経を読み始め
お丸ちゃんが挨拶をするために前に立った
息を吸ったお丸ちゃんがポロポロと涙を流し始め
私とあべぞうはお丸ちゃんに駆け寄った
お丸「ごめんね。大丈夫よ」
「大丈夫じゃないよ」
お丸ちゃんの顔を覗くと
やっぱりまだ泣いていた
お丸「それでも、挨拶はしなくちゃ」
お丸ちゃんは濡れた顔をサッと拭いて
1歩前に出る
お丸「本日は鼠さんのためにお集まりいただいて、本当にありがとうございます」
お丸ちゃんが深くお辞儀したのを見て
私も慌てて頭を下げた
お丸「生前の鼠さんはとてもかっこよくて、優しくて、、ほんとに、っ、素敵な人でした・・・っ」
そこまで言って
お丸ちゃんはまた泣き始めてしまった
私もつられて涙が出てきてしまった
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。