第44話

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2022/06/17 16:12
私が泣いているのに気づいたお丸ちゃんが

私を優しく抱きしめて泣き始めた

もう二度と会えないんだ

これが終わったら次郎吉さんにも

話で聞いていた鼠小僧にも会えない

悲しくて悲しくて涙が止まらなかった

そんな私たちの周りに

お団子屋の常連さんたちが集まってきた


瓦版売「何人の江戸っ子が鼠に助けられたか・・・」


基「それだけじゃねぇ、鼠のおかげてみんな夢を見ることが出来た」


俊介さんの言葉にみんなが頷いた

私もその1人だ

次郎吉さんは私にたくさん希望をくれた

なのに、なのに・・・


瓦版売「それなのに、あの鉄砲組に撃たれて大川へ真っ逆さま。そのままどこかへ流されちまった・・・」


基「でもよ、証拠はねぇんだよな、確かに死んだって。あの鼠が簡単に死んじまうはずがねぇよ」


俊介さんの言葉を聞いて

目の前が少し明るくなった気がした

そう、死体を見たわけじゃない


「そうかもしれない」


死んだなんて嘘だ

そんな願いも込めてそう口走った


お丸「あなた、」


お丸ちゃんは私の手を引いて

ゆっくり首を振った

知ってるよ。わかってるよ。

でも、でもさ


「信じたくないよ・・・」


お丸「それは私も、みんなも同じよ」


私が声を上げて泣き始めると

周りのみんなもつられるように泣き始めた

一晩中みんなで別れを惜しんだ

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