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第9話

ツン9:デレ1〈エアシャカール〉
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2022/12/25 17:26
ある日、トレセン学園の通路で話をしているアグネスタキオンと、そのトレーナーを見かけた
「トレーナー君、”私”と10回言ってみてくれ」

「……今度は何企んでるの?」

「いいから、ほら早く!」

「えー……私私私私私私私私私私。はい、言ったよ」

「じゃあ、トレーナー君が何よりも大切で世界で一番愛してるもの、なーんだ?」

「何それ…………じゃあ逆に聞くけど、私が何よりも大切で世界で一番愛しているもの、なんだと思う?」

「ふふん、そんなの簡単さ。君の担当ウマ娘であるこの私、アグネスタキオンだ。そうだろう?」

「……ふふっ、せーかい」

「君ならそう言うと思っていたよ! それじゃあそんな君が何よりも大切で世界で一番愛している私からのお願いがあるんだが……」

「あー……そういうこと……も〜仕方ないな〜」
何やら教室前でイチャついているだけだったようだ

その時閃いた! これはエアシャカールとのコミュニケーションに使えるかもしれない!
「(シャカールに言ってみよっと)」
いつもツンツンなシャカールでもたまにはデレてくれると信じて、私は今度シャカールに試してみることにした
「ねえシャカール」

「ンだよ」

「”オレ”って10回言ってみて」

「やだ」

「そこをなんとか!」

「やだっつってンだろ、めんどくせェ……」

「ねー言うだけだから! すぐ終わるでしょ!」

「……チッ…………はァ……オレオレオレオレオレオレオレオレオレオレ。で? 何聞くンだよ」

「シャカールが何よりも大切で世界で一番愛しているもの、なーんだ!?」

「……はッ、くだらねェ。そンなのもはや引っかけ問題ですらねェだろ」

「え〜? じゃあ強いて言うなら?」

「強いて言うなら…………そうだな…………」

「うんうん……!」

「PCだな」

「…………デスヨネー……」

「なーに残念そうな顔してンだよ。お前って言うと思ったか?」
まぁあのシャカールだ、最初から望み薄だとは思っていた。……けどやっぱり…………
「……ほんのちょびぃ〜〜〜〜〜っとだけ、期待してました……」
期待してたというより、たまにはシャカールからの愛情表現が欲しい、という私の願望だったのだと思う

いつも私のクソデカ感情は一方通行だから、そのアンサーが少しは欲しかったのかも、なんて
「……ふーん? ま、残念だったな。オレにそうゆうのを期待する方が間違いなんだよ」

「…………そーだねー……」
なんとなーくわかっていたことでも、やっぱりちょっとしょげてしまう
「(……しょうがない、無かったものと思って仕事しよ)」
気持ちは沈んだままだったが、なんとか切り替えようと仕事に手をつけた

シャカールもトレーナー室に残ったまま、自分のノートPCをいじっていた


「(…………アイツ、マジでヘコんでンじゃねーか……)」
PCを前にして仕事をしているが、見て分かるほどいつもに比べ仕事が捗っていない
「(人に変なゲームさせといて勝手に落ち込ンで……何がしたいンだアイツ。効率悪ィ……)」
「……………………」
ぽけーっとした顔で画面を見つめているトレーナー
「(……あーーー…………らしくなさすぎてこっちが集中できねェ……)」

「(………………チッ、仕方ねェな……)」

「おい」

「エッアッ、どっどうしたの……!?」
動揺しすぎだろ……と内心思いながらも、オレは口を開く
「いいか、お前が変数っつー話はしたよな」

「えっ……う、うん」

「オレはダービーの7cmが変わったのは、お前が担当になったからだと踏んでる」

「なっ……違う! あれは私の力じゃ──」

「違う、そういう話じゃねェ」

「確かに1着を獲れたのはオレの実力があったからだ。でもそれだけじゃねェ」

「不確定要素であるお前が、オレとは違う着眼点を持ってたから獲れたンだ」

「シャカール…………」

「今はまだオレの一番、相棒はPCコイツだ。”今は”な」

「…………え? そ、それって……」

「……ま、せいぜい頑張れよ」
それだけ言って、オレはトレーナー室を出た
「…………………………」

「…………………………夢?」
いくらなんでもデレすぎでは?

ちょっと待って頭が追いつかない
「はーーーーー……………………」


「………………がんばろ」

この日、私は仕事がいつもの5倍捗った

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