第8話

いっぱい食べる君が好き〈オグリキャップ〉
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2022/07/22 09:46
「………………………………」

「…………オグリ?」
それはオグリと出かけている時のことだ

ふと立ち止まったオグリは、建物の方をじっと見つめていた

どうしたんだろうと思い、建物の中を覗き込む
「これは……中華料理店?」
建物の中は飲食店になっており、その中には『食べ放題!』と書かれたポスターが貼ってあった
ギュルルルル…………
オグリのお腹の音が鳴り響く
「……っ…………トレーナー…………!」
キラキラした目で語りかけてくるオグリ

喋らなくてもわかる。「中華料理食べに行きたい」と言いたいんだろう

…………たくさん食べさせてやりたいところだが、今のオグリにそれを許可することはできない

なぜなら、彼女は今──
「…………オグリ、残念だけど……減量中だし、さすがにダメだよ。もう少しの辛抱だから……」

「………………そう……そう、だよな……
すまない、トレーナー…………わかっていた、わかっていたんだ……でも……!!」
そう言ったオグリの目からは、今にも涙が零れそうだった

それもそのはず。最近の彼女はいつもよりずーっと食事の量を控えめにしている

白米の量を減らし、おかずの量を減らし、間食も無し……

オグリにとってはかなり辛い日々だろう、だがあと少しで目標の体重に届くのだ

それまでの辛抱なのだが…………オグリは一向に店の前から動かない
「オグリ、もう行こう! 辛いことだけど、今食べ放題なんて行ったらリバウンド間違いなしだよ!!」
普通のウマ娘が食べる量ならなんら問題ない。だが彼女はオグリキャップだ

食べ放題に行ったら店側が赤字になるレベルの量を食べる娘なのだ

そんなオグリを今食べ放題に行かせたら間違いなくリバウンド、なんなら元の体重よりも増えてしまうかもしれない
「すまない、トレーナー……! 見てるだけなんだ、見てるだけでいいからもうちょっとだけ待っててくれ…………っ」
口から滝のようにヨダレを垂らしたオグリは、今まで見たことがないほど辛そうな顔をしていた

そんな顔をされてしまっては、こちらの胸が締め付けられてしまう

残念なことに、私はこの子の悲しむ顔に相当弱かった。そして──
「あ〜〜もうしょうがない!! 行こうオグリ!! ずっと我慢してたもんね!!」

「! トレーナー、本当かっ!?」
わかりやすく目を輝かせるオグリ。さっきまでのどんよりした顔が嘘のように晴れ、その顔には笑顔が浮かんでいた

トレーナーとしては完全に失格だ。だがトレーナーである以前に、私は彼女のファンなのだ

応援するウマ娘の喜ぶ姿が見たい。それは全国のウマ娘を応援する人々が感じていることだろう
「うん! お金は私が出すから、めいっぱい食べて!!」

「トレーナーっ……! 本当に……本当にありがとう……!!」
そう言ったオグリは、全速力で店の中へ駆けて行った
「…………っちょ、そんなスピード出して走ったら事故るよオグリ!!」
「………………やっぱり、すごい量だね…………」
机いっぱいに置かれたお皿に、山のように盛られた餃子、炒飯、小籠包……

わかってはいたが、やはりとんでもない量を持ってきた

厨房の方からバタバタと物音が聞こえる。調理が追いついていないのかもしれない
「なんならこれでも足りないぐらいだ。もう少しついでこようか」

「いやいやいやそれ以上は他のお客さんの分が無くなるから…………」

「む、それもそうだな」
料理越しにオグリの声が聞こえる

大量に盛られた炒飯のせいでオグリの顔は見えなかった
「それじゃあ、いただきます」
きちんと食前の挨拶をすると、山盛りの料理たちが吸い込まれるようにオグリの口の中へと入っていく

オグリの顔は見えなかったが、美味しそうに食べるオグリの声が聞こえてきた
「はむっ……おいしい……!」
そしてどんどん無くなっていく料理から、オグリの顔が覗く
「(ああ、やっぱり連れてきてよかったなぁ)」
目を輝かせ、口いっぱいに料理をほおばるオグリ

その姿はとても微笑ましかった
「私やっぱり、オグリの食べてる姿が大好きだ」

「? そうなのか? じゃあもっと食べよう」

「ふふっ、うん、そうして!」
翌日──……


「…………体重、前より増えちゃったね……」

「……そうだな…………」





ごめんなさいほんと正直に言います熱冷めてました……😇😇
愛の量は変わっておりませんので!!ご安心ください!!

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