第12話

#6 山内晶大
2,246
2022/07/31 00:37


ピピーッ





あなた「今から10分間休憩とりまーす、ドリンク飲んでしっかり休んでください」





ミーンミーン…






体育館の外では蝉が鳴き蒸し暑い。


夏真っ只中だ。


私は男子バレーボール部のマネージャーとして夏休みも学校に来ている。


大変だけど自分が誰かの役に立てるのは嬉しいしやりがいがある。













あなた「よいしょっ…と」





??「あなたお疲れ、」





背後から突然声をかけられびっくりして振り返る。





あなた「山内先輩!お疲れ様です!」





声をかけてきたのは2年の山内晶大先輩。


部内トップの身長で、キャプテンも務めている。


その高い身長で守る鉄壁のようなブロックは、他校のエースのスパイクでさえいとも簡単に止めてしまう。







山内「それ体育館に運ぶやつ?持ってくよ、」




山内先輩が指さしたのは私がバケツに溜めていた氷水。




部活後にはアイシングや体温を下げる目的で部員達が好んで使う。





あなた「ありがとうございます、でも大丈夫ですよ!これマネージャーの仕事なので笑」





あなた「山内先輩こそ体育館戻って休憩してください!!」




「そう…?」と心配そうな山内先輩を体育館へ戻るように指示する。




女子1「やっぱり山内先輩ってかっこいいよね…」



女子2「そういえば私この前インスタのフォロリク通してもらっちゃってさ!!DMでもお話しちゃったんだよね〜〜」



女子1「え〜いいな何それ!!私もしよーっと」



山内先輩はその身長とプレーの強さで校内でも、他校からも人気。



街を歩けば身長が高くて一目瞭然だから本人は
「視線が痛い」って大変みたいだけど、笑



ピピーッ




気づけば10分経ったようで、体育館に置いてあるスポーツ用のタイマーが音を鳴らす。




氷水の入ったバケツを体育館の入口まで運んで置いた。




次の練習が終われば今日はとりあえず練習は終わり。自主練したい人はして帰る、という感じだ。




あなた「じゃあ試合形式での練習始めます。チーム分けはホワイトボードに貼ってあるので確認して練習に移ってください。」




「「はい!!」」




よく男バレのマネージャーは仕事してない、とかサボってる、とか言われるけど、うちの監督がマネージャーは最低限の指示だけであとは部員達にやらせろっていう考えの人で。



それでよく酷い事を言われたりもするけど、笑




体育館の入口まで運んだ氷水入りのバケツに、

人数分のタオルを入れておく。

夏になるとこれで皆喜んでくれる。

練習終わりに喜んでくれたらいいな、なんて部員の喜ぶ顔を想像して口角が上がってしまったり。

時間というのは過ぎるのが早いもので、あっという間にその日の練習が終わってしまった。


部員達は練習を終えて真っ直ぐバケツの元に向かった。


やっぱり冷やしたタオルで喜んでくれてる、笑


ミーティングも終わったので帰り始める部員達もちらほら。


一方私はというと、ドリンクを入れていたウォーターサーバーを洗うという仕事が残っている。


うちの部活は結構人数が多くてすぐドリンクが無くなるのでウォーターサーバーは2つ用意されている。洗うのも大変だ。



ウォーターサーバーを両手に抱えて水道に洗いに行こうとすると、水道で顔を洗ってきたらしい山内先輩とバッタリ会った。



あなた「山内先輩お疲れ様です!!」


山内「お〜、お疲れ。あ、手伝うよ」


あなた「いやいや大丈夫ですよ!このくらい朝飯前です!笑」


部員に手伝わせるわけにはいかないので余裕を見せてみる。


山内「いいから。手伝わせて?笑」


こっちちょうだい、と言って山内先輩はウォーターサーバーを私の手から取ってくれた。


強い上にこんな気遣いまで出来るなんて…


どこまで素晴らしい選手なんだろう、、


と思いながら2人で肩を並べてウォーターサーバーを洗った。



山内「よし、OK!!戻すのいつものとこで良いんだよね?」


あなた「あ、はい!大丈夫です!ありがとうございます!」


山内「その…いつもありがとね、助かってる」


急なその言葉にびっくりして目線を上げると、照れくさそうな山内先輩と目が合う。


あなた「え、あ、いやいやこちらこそ!!」


動揺して変な反応になってしまった。


山内「じゃ、俺そろそろ帰るね。お疲れ、」


ポンポン



…ん?



ポンポン…?



頭を…?




私の…?



.

.

.


ええええええ?!



山内先輩は恥ずかしそうに頭をかきながら体育館を出て行ってしまった。



なんだったんだ今の…

次の日、ホームルームが終わって部活に向かおうとすると、とある先生に渡さなければいけない書類がある事を思い出した。しかもその先生は2学年の担任、、2年生の教室行かなきゃいけないのか、と少し重い足取りで向かう。


.
.
.


無事書類を渡し終え、体育館に向かおうとすると全く知らない男子の先輩に絡まれた。



先輩1「あれ、美人マネって言われてる子じゃない?」


先輩2「え、ガチじゃん!!ねえ男バレのマネだよね?!うわガチ可愛いな、、」



あなた「え、、っと、、」



あなた「すみません、部活行かなきゃなので…」



そう断り去ろうとする。



ガシッ




先輩1「待ってよ、LINEだけでも交換しよ?ね?」



あなた「ら、LINE…?」



先輩2「いーじゃんお願い、ね?」



先輩の力は強いわ隙が無いわで逃げれない。



この先輩達しつこいな…そう思っていた。



??「あなたお待たせ、行こ」



あなた「先輩?!」



山内「待たせてごめんな、部活行こ」



あなた「え、でも、」



山内「じゃあなお前ら〜俺らのマネに手出すなよ〜」



山内先輩はそう言うと私の手を取り階段を降り始めた。



あなた「山内先輩、あの、私達一緒に行く約束なんて…」


山内「あなた困ってそうだったから、笑
ごめんね、手まで繋いじゃって。嫌じゃない?」



わざわざそう聞いてくれる山内先輩。



あなた「ありがとうございます!!本当に助かりました、、」


山内「なら良かった、」



山内「…ねえ、俺達このまま部活行ったら、みんなどんな反応するかな、笑」


山内先輩はいたずらに笑う。


あなた「やめてくださいよ、もう笑」


本当はずっと繋いでいて欲しい。そう思ったけど言えるわけがなかった。



相手はファンが沢山いる山内先輩。

かっこよくてモテモテで…叶うはずがない。



山内「ごめんごめん、笑」


離れてしまう手が名残惜しかったのは、


口が裂けても言えない。


.
.
.


次の日、いつも通り部活に行こうとすると廊下に人だかりができていた。



その全部と言っていいくらいが女子。



何の騒ぎだろうと思っていると、山内先輩が現れた。



あなた「山内先輩?!」


山内「あ、いたいた」


山内先輩がこっちに向かってくるのと一緒に女子もこっちについてくる。


あなた「なんでここに…?!」


2年生の教室から体育館へは階段を降りて行けばすぐなのになんでわざわざ1年生の教室に…??



山内「あなたの事迎えに来た」


あなた「……え、何言ってるんですか?!」


山内「え、俺そんな変なこと言ってる?笑」


あなた「え、いや変な事というか、、」


あなた「なんで迎えに…?」


山内「…昨日みたいなことあったら、困るから」


あなた「山内先輩が困るんですか?笑」


山内「いいから笑」


山内先輩、もしかして私の事心配して…?


なんて事を考えてしまったり。


山内「ほら早く行くよ、笑」


あなた「はい、笑」


山内先輩は昨日のように私の手をとって階段を降り始めた。


廊下に黄色い歓声が響き渡る。


その声で山内先輩の人気っぷりを痛感した。


同時に私の恋は叶わないということも。


山内「あなた、なんか暗い顔してる」


あなた「…え、そうですか??」


あなた「全然元気ですよ!笑」


山内「…そう?」


あなた「はい!笑」


危ない危ない、山内先輩に考えてる事バレる所だった、、


山内「…あなた、今日部活終わったら時間ある?」


あなた「え、?あ、はい!ありますよ!」


山内「今日一緒に行きたい所あるから、来て欲しい」


あなた「?はい、分かりました」


山内先輩が行きたい所…?


2人っきりで…?


淡い期待を抱いて、いつも通りマネージャーの仕事をこなした。

山内「あなた、行ける?」


あなた「はい!行きましょう!!」


.
.
.


あなた「山内先輩、どこ行くんですか…?」


山内「まあまあついてきてよ。ちょっと階段登るけどごめん、」


階段を登る…?!




一体どこに連れて行かれてるんだ私は、、



階段を登りきると、



山内「ここからは目つぶって欲しい」


あなた「目つぶるんですか、?!」


山内「俺がちゃんと連れていくから大丈夫、笑
手貸して」


山内先輩に言われるがまま、目を瞑って手を差し出す。


山内先輩に手をとられ、少し歩くと


山内「…目、開けて上見てみて」


あなた「…うわ〜、綺麗、、!」


上を見ると、美しい星空が広がっていた。


ちょっとした広場のような場所なのだろうか。


開けていていつもより空が大きく感じる。


山内「綺麗でしょ?ここの景色」


山内「あなたに見せたかった笑」


え、


何それ、


期待したくなるじゃないですか、


山内「それで、今日はちょっと相談もあって」


山内「…聞いてくれる?」


あなた「…はい!!もちろんです!」


山内「ありがと、笑」


山内「…俺ね、好きな人がいて。」


この一言でさっきまでの期待はするものじゃなかったと思った。


山内「その子は俺の事好きじゃないと思うんだけど、」


山内「真面目で、頑張り屋で、何もかも1人で全部やろうとするような子で、笑顔が可愛くて。」


山内「気付いたら好きになってた。」



私、山内先輩の惚気話聞きにここに来たんだっけ、なんて胸が痛むのを感じて思ってしまう。


山内「…でもその子と同い年じゃないんだ」


山内「その子は後輩で、俺の方が年上。」


しかも後輩…?


インスタでDMしたって嬉しそうだったあの子かな、、


山内「その子のタイプは同い年かもしれないけどね笑 でも俺は諦めたくない。」


山内「…こんなに人の事守りたいって思ったの、
初めてだから」


星空を見つめる山内先輩の目は、その子を本当に愛おしく思っているような目で。


あなた「…きっと叶いますよ、」


あなた「今度は私じゃなくてその子を、ここに誘ってみたらどうですか?きっと喜びますよ笑」


胸が苦しいのを抑えて、山内先輩に言う。


山内「…え?」


山内「あなた…気づかない?」



気づく…??


あなた「…何がですか??」


山内「あーまじか…」


山内先輩は少し笑って頭を搔く。


心做しか顔が赤く見えるのは気のせいだろうか。


山内「…その子って、お前の事、なんだけど」


あなた「…え、?」


山内「俺の好きな人、はあなたです、」


照れくさそうに、でも真剣に私の目を見て言う山内先輩。


山内先輩の、好きな人が私…?


こんな事って有り得るのか、って何回も瞬きした。


あなた「本当…ですか?」


山内「…本当。やっぱ俺じゃダメだよね、
ごめん笑」


あなた「何言ってるんですか!山内先輩が良いです!」


あなた「私がどんな気持ちで相談聞いてたと思ってるんですか!」


山内「…え、じゃあそれって、」


あなた「山内先輩、私と、」


山内「あーちょっと待って!俺から言わせて」


山内「あなた、俺と付き合ってくれますか?」


あなた「はい!私なんかで良ければ、笑」


山内「俺はあなたがいいの。笑」


そう言うと山内先輩はふわっと私を抱きしめた。
山内「ねえ、俺の事下の名前で呼んでよ」


あなた「え、下の名前でですか?!」


山内「うん、笑」


あなた「晶大…先輩?」


山内「…バカかわいいじゃんなんだよお前、」


あなた「…へ?!」


山内「先輩無しがいい、」


あなた「え、あ、晶大、?」


山内「…明日からそれで呼んで、」


あなた「え、あ、分かりました!」


抱きしめてくれている山内先…


晶大の耳は真っ赤になっていた。



次の日の放課後


山内「あなたー部活行くよー」



女子1「キャーーかっこいいーー!!」


女子2「山内先輩ーー!!」



今日もギャラリーが多いことで。



あなた「待ってください山内先輩!」


山内「山内先輩、じゃなくて、?」


あなた「晶大、?」


山内「それで良し、笑」


ポンポン


晶大は満足そうに私の頭を撫でた。


キャーー!!!


ギャラリーが私の気持ちを代弁してくれているかのように叫んだ。


晶大は私の手を取り階段を降り始めた。


今日からはもう、何も気にせずに手を繋げる。


ちょっといたずらしたくなって、普通に繋がれた手を恋人繋ぎにしてみた。


山内「…え、」


あなた「嫌ですか…?」


さすがに早かったかな、と普通に戻そうとする。


山内「…なんでお前そんな可愛いことすんの」


あなた「え、?」


山内「これがいい、てかこっちがいい」


一度解けた手をもう一度恋人繋ぎし直してくれた。


山内「ほら、行くよ笑」


あなた「はい、笑」


ーENDー

久しぶりに書いてみましたいかがでしたでしょうか!!


リクエストありがとうございました🙏🏻´-


拙い文章ですが楽しんでいただけたら幸いです🥲


更新は遅くなってしまいますがいつも私の話を読んでくださる方々には感謝でいっぱいです。


これからも私なりに頑張って行きますのでよろしくお願い致します( ; ; )

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