学校登校初日。
学校の最寄り駅で私は、誰かに声をかけられた。
そう言って、彼は私の生徒手帳を渡してくれた。
人見知りな私は、上手くお礼が言えなかった。
その上、その場から走って逃げ出そうとした。
彼に、肩を優しく捕まれて、振り返った。
彼は、笑顔を浮かべてこっちを見ていた。
双子の兄以外の男の人に近づいたのは久しぶりで、私の頬が熱くなっていくのが分かった。
もう、彼の方を振り向かなかった。
駅から出ると、中学校からの親友の米谷真優がいた。
真優は、美人でスタイルもばっちり。
私と仲良くしてくれるなんて、夢のような完璧な女の子だった。
2人で学校へ向かった。
さっきの出来事を話そうと思っていたけれど、あまりにも入学式への緊張がすごくて、そんな出来事も忘れてしまっていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!