第5話

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2022/02/23 06:09
まさかとは思ったが、私の脳内にはディオの存在しか浮かばなかった。



小さい子供、男の子、姉さん……ディオとしか思えなかった。もしや、さっき聞こえてきたあの足音も……考えたくもなかった。



こんな夜中に、1人で外に出ているなんて、想像したくもない。第一、私がこんな仕事をしていることを知られたくなかった。



もしそれで変な噂でも立ったら、間違いなくディオはいじめられる。それだけは嫌だった。ディオを辛い目に遭わせたくなかった。



ディオを傷つけないためにも今は……他人のフリをするしかない。心が傷むが、これもディオのためなんだ。
あなた·ブランドー
……そうなんですね
.
あなたー?なんかこの子に名前聞いたらあなたの弟だって言ってるんだけど…。
あなた·ブランドー
……っ
言いにくかった。次の言葉を。言いたくなかった。もしかしたらディオを傷つけてしまうかもしれない。



周りの人に傷つけられるとかそう言う話以前に、そもそも私がディオを傷つけていた。今更ながらそこに気付いた。



しかし、こんな職場で私が働いていることを知られるのは嫌だった。ディオの笑顔を二度と見られなくなるような気がした。



だから、私は涙ながらに言った。
あなた·ブランドー
……私に弟なんていませんよ。人違いじゃないですか?
私がそう言うと、暫くの沈黙が流れた。暫くすると、先輩がこちらに話しかける。
.
でも、この子は本当に弟だって言ってるわよー?えっと、何だったかしら…ディオ。ディオって言ったら分かる筈だって…。
あなた·ブランドー
弟はいないって言ってるでしょう!……その子を家まで送ってあげてください
大いなる罪悪感に苛まれて、止まらない涙を拭いながらそう怒鳴った。察しの良いディオには、私が泣いていることもバレているだろう。



出ていくのであろうディオの声が聞こえてきた。無理矢理追い出されそうになっているのか「離せ!」と叫んでいる。
ディオ·ブランドー
姉さん!僕だよ!何で……グッ…!
明らかに殴られたような音が聞こえた。恐ろしくなった私は思わず椅子から立ち上がってしまった。しかし、見に行く勇気はなかった。



崩れるように床に座って、声を必死に我慢して泣いた。私はなんてことをしてしまったんだろう。ディオをこんな目に遭わせてしまった。



偶々やって来た先輩が私を見てギョッとした。
.
あなた……アンタ、今日はもう帰りなさい
あなた·ブランドー
でも…。
.
そんな泣きながら嘘ついてまであの弟くんを見放したい理由でもあるの?申し訳ないからそんなに泣いてるんじゃないの?
あなた·ブランドー
う…ぅ…
.
兎に角、今日はもう帰って。弟くんに謝ってあげて
先輩にそう言われた私は、ゆっくりと頷くしか出来なかった。立ち上がろうとしたその時、ドタドタと足音が聞こえてきた。
ディオ·ブランドー
姉さん!
やって来たのは、息を切らしながら私を呼ぶディオだった。

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