第12話

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2022/05/26 11:44
散々泣いた俺は今度こそ寝た。流石に泣き過ぎた。目が覚めた頃にはとっくに日が昇って朝になっていた。



ふと横を見たが、そこに姉さんの姿は無かった。いつの間に起きていたのかと思ってすぐに探すと、朝ご飯を作っていた。



俺の足音に気付いた姉さんはこちらを振り向くと、優しい笑顔で「おはようディオ」と挨拶をしてくれた。そんな姉さんも愛おしくて俺も笑顔で同じ挨拶を返した。



ふと、テーブルに置かれている懐中時計を見ると……
ディオ·ブランドー
ま、まずい、学校に遅れてしまう…。
普段の俺だったらとっくに家を出ているような時間だった。今日に限って寝坊をしてしまうとは。着替えに行くために急いで部屋に戻ろうとした時だった。



姉さんが「待って!」と俺を止めた。
あなた·ブランドー
昨日の今日で学校に行くのは厳しいでしょう…私から伝えてあるから、暫く学校には行かなくて良いわよ
ディオ·ブランドー
えっ…?
ビックリして思わずマヌケな声が出てしまった。暫く学校には行かなくて良い?じゃあ俺は今から急いで着替える必要はないと言うことか?



急なことに数秒固まったが、すぐに冷静になってテーブルの椅子に腰掛けた。
ディオ·ブランドー
あ、ありがとう姉さん
あなた·ブランドー
良いのよ…昨日は私が悪かったから…。
ディオ·ブランドー
そんな、あんな夜中に姉さんを追ってうろついてた僕が悪いんだよ…。
あなた·ブランドー
確かに…夜中に寝ないで家を出たことには、感心しないわね…。
そう言って困り顔で微笑む姉さん。なんだか儚かった。今にも消えてしまいそうなオーラが出ていたような気がした。



だけど、何より久し振りに姉さんと1日いられることが嬉しくてそこについてはあまり気にしなかった。



なんだかいつもよりちょっと良い朝ご飯を持って来た姉さん。学校のことを考えずにこうして過ごしていられるなんて、何年ぶりだろう。



ずっとこんな時間が続けば良いのにな、と思いながら置かれた朝食に目をやった。やっぱり姉さんは料理上手だ。
あなた·ブランドー
今日はトーストにサラダもあるから…いっぱい食べてね…!
ディオ·ブランドー
姉さんもね?姉さんはいつも「お腹一杯だから」って嘘ついてるんだからさ
あなた·ブランドー
まあ…やっぱりもう見抜かれてたのね…。
「ディオには敵わないわね…。」と言いながら向かいに腰掛けた姉さんは、何故か目の前の朝食に手をつけず、じっと俺を見ていた。



吸い込まれるように俺も姉さんを見つめ返す。姉さんも俺も同じオレンジ色の瞳を持っているはずなのに、どうしてこうも違うものに見えるのだろう。



今にも俺の意識を飲み込んでしまいそうな、どこかキケンな感じのする瞳から目をそらせなかった。

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