第11話

11つ目の星
33
2020/12/28 11:19
少女は1人、静かな暗闇の中で立っていた


大切な何かを失った時のように
涙を流し、ある方向を向いていた
「あ…まっ……」
その目に光などなかった


少女はただ後悔をしていた


何も動けず、少年を止めれなかったことを後悔しているのだ
「神…様…」
少年の未来を託すかのように
小さな声で、それでもしっかりと発した
しばらく少女は動けなかった

ずっと


ずっと


ずっと


後悔していた
「星が…綺麗だな…」
星を見ていたら、少女は1つの神話を思い出した
「…獅子座……」
そう。獅子座の神話だ


獅子座はヘラクレスが人喰いライオンと戦う話
「”諦めないで戦ったんだ”」
少年がそう言っていたのを思い出した


”諦めない”少年が話した神話の内容だったが、なんだか今は自分に言われているような感覚がした
「……そうだね。諦めちゃダメだ。きっといつか帰ってくる。それまで毎日ここに来よう。」
少女は決心した


けど、毎日いるとなるとさすがに体力が持たない


だから、1度家に帰らなくてはならないのだ
「…ふぅ…帰らなきゃ」
そして少女は1歩づつ歩き始めた








トコ































トコ






























トコ







































トコ







































トコ































































「…着いた」
少女にとってはどんな所よりも怖いところ



でも、少女はなんだか平気な気がした


根拠はないが
「…入ろう」
ガチャ
「た、ただいま」
ドカドカ
人が歩いてくる音が聞こえる


多分母親だろう


怖い。そんな思いが少女を飲み込む
「……」ブルブル
少女は下を向き、目を閉じた


叩かれる。


少女はそう思ったが、殴られたような感覚はなかった


それとは裏腹になんだか暖かい気がした
少女は数時間外にいたから正直感覚はなかった


だから”気がする”だが


殴られなかったことに少し安心感を覚え、下にしていた頭を動かし、前を向いた
「…!」
少女は抱きしめられていた


なんで。どうして。という疑問よりも先に、安心感や幸福からか、少女の目からは自然と涙が出ていた
「…どこに行っていたの」
母親に低い声で言われたそれは、少女を怖がらせたが、少女はヘラクレスのように勇気を振り絞って言った
「ごめんなさい。星を見ていたの。とても綺麗だったから…怖かったから」
そう言われた母親の顔は怒ることも無く、ただじっと少女を見ていた


少女はこの沈黙が体感的には何時間も経っているように感じたが、実際は1分も経っていないだろう


母親は1つため息をついて
「…はぁ……よかった…」
と言った。そしてずっと抱きしめていた
母親は少女に酷いことをしたことを、少女が出ていった後に認識したのだ


少女にしては遅いことかもしれない。
でも、少女はそんな事どうでもよかった


また昔みたいに抱きしめて貰えた
それだけで嬉しかった
諦めなければいつか報われる


ヘラクレスもそうだったのだろう。
人喰いライオンに諦めずに戦ったから勝てた
報われたのだ


少女はこの神話に助けられた
いや、少年に助けられた
その後、少女は母親と仲良くなり、母親は少女を忙しく働かせないことを誓った


では、少年はどうなったのだろう


連れていかれてしまったあの後


少女は未だにそれだけを考えていた
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こんばんは一夜です
今回は少女のお話でしたね
仲直りできて良かったです
これも少年に助けられたからですね
次は少年のお話をしていこうと思っています
それまで長らくお待ちください
それではまた次の夜に

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