第10話

八話 似た者同士?
211
2021/09/07 23:55
一方でハナレの方も朝餉の時間に山姥切に同じような話を伝えていた。昨日、山姥切はハナレに街の景色を見せてもらい、自分達の居た国、“世界”では無いのかもしれないと薄々察した。そのことはハナレには伝えず、城で一晩過ごすことになり、今に至る。
山姥切国広(極)
山姥切国広(極)
俺も、一緒でいいのか?
ハナレ
ハナレ
あぁ。あんたが探している仲間らしき人物が、別の一族の王子の元にいるかもしれないからな。今日の夕刻頃に会いに行く
山姥切国広(極)
山姥切国広(極)
……分かった
山姥切国広(極)
山姥切国広(極)
(へし切長谷部……刀に戻った原因は分からないが、主に見せないと。仮に再び人の姿になったとしても、記憶まで初期化されていたりはしないだろうか)
山姥切は傍に置いていた“へし切長谷部”の刀を不安気に見つめた。その姿を見ていたハナレは「一応聞いておくが……盗賊とかではないよな?」と渋々尋ねる。
山姥切国広(極)
山姥切国広(極)
俺が?まさか。と言うか、仮にそうだとしたら聞かれて素直に認めたりはしないだろう。多分
ハナレ
ハナレ
ごもっともだな。すまん。変なことを聞いた。忘れろ
山姥切がフッと笑うと、ハナレが「……笑うな」と複雑そうな表情を浮かべた。
山姥切国広(極)
山姥切国広(極)
アンタも変なことを言ったりするんだな。警戒されるのも無理も無いかもしれないが……俺と一対一で話す時表情が固い。昨日居た二人と話している時よりも
ハナレ
ハナレ
……よく見てるんだな。いや、俺がわかりやすいだけか?イヌイが拾って渡した刀ばかりに視線を向けていたから気になったんだ
山姥切国広(極)
山姥切国広(極)
……そんなに見てたか?
ハナレが頷くと、山姥切は「すまん。何か企んでいるとかではないんだが……仲間の大事な刀だから心配になってしまってな」と片手で頭を抱えた。そんな山姥切を見たハナレもまた、クスッと笑った。
ハナレ
ハナレ
あんたとは昨日会ったばかりだが、どうやら俺達はどこか似ているらしい
山姥切国広(極)
山姥切国広(極)
そのようだな
ハナレ
ハナレ
ところで、あんたは“主”に仕えているんだろう。一体どんな主なんだ?
山姥切国広(極)
山姥切国広(極)
どんな主、か。強いて言うなら、容赦無い時は容赦ないが……聡明で意思の強いお方だ。その反面、繊細で仲間達にも分け隔てなく接し、時に子供じみた冗談を言ったりするよく分からん人だな。そして、俺の“恩人”でもある
ハナレ
ハナレ
恩人……?
山姥切国広(極)
山姥切国広(極)
そうだ。俺に“居場所を与えてくれた”恩人だ。だから、俺はその恩を返したい
昔を思い出すかのように微笑みながら視線を下に向ける山姥切を見て、ハナレは「その主は、随分と慕われているんだな」と口にした。
山姥切国広(極)
山姥切国広(極)
まぁな。初めは色々あったが……長い付き合いだからな
ハナレが「何年の付き合いなんだ?」と聞こうとした時、部屋の外から「失礼致します、ハナレ様。公務のお時間が……」と従者の声がし、ハナレは「分かった。今行く」と返事をした。
山姥切国広(極)
山姥切国広(極)
……王子も大変だな
ハナレ
ハナレ
これも国と民のためだ。では、また後で
山姥切国広(極)
山姥切国広(極)
俺は部屋で待機していよう
部屋に一人残された山姥切はへし切長谷部の刀を片手に持ち、「主……。兄弟。心配しているだろうか」と小さく呟いた。

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