加州清光がカノエの城に向かっていた間、同じこよみの国の別の領では、違う青年が亥の一族のハナレ王子と、戌の一族のイヌイ王子、子の一族のシン王子によって助けられていた。
金髪の青年は「俺は、仲間と一緒に仕事で遠出していたんだ。すまないが、これ以上は話せない」と申し訳なさそうに謝り、「アンタ達は誰なんだ?」と三人を見た。
三人は互いの顔を見合ってから、自分達の名前と素性を明かし、こよみの国についても話した。
仕事の話をする為、シンとイヌイはハナレの城へ集まっていたのだが、青年はハナレの城の付近で倒れていたらしく、ハナレの従者がそれを見つけたという。
そして、そのままハナレの許可を得て城へ運んだらしい。
青年が立とうとすると、イヌイが「まぁ待てって」と、青年を引き止めた。
山姥切が答えると、何かを思い出したかのように再びイヌイが「あぁ、そうだ。これ、お前が倒れてた横に落ちてた。これもお前の刀か?」と言い、一振の刀を前に出す。その刀を見た山姥切は目を見開き、前のめりになる。
山姥切は自分のポケットの中に“ある物”が入っているのを思い出し、失くなっていないか確認する。
元いた場所へ帰る為の装置、“携帯型時空転移装置”だ。
携帯型時空転移装置がちゃんとポケットに入っていると分かると、山姥切は胸を撫で下ろした。
話がある、とでも言うような目線をイヌイとハナレに向け、二人はそれを察したのか、シンの後に続いて部屋から出る。そして、ハナレは近くにいた従者三人に、「部屋の前で見張っていろ」と指示を出した。
廊下を歩きながらイヌイが「良いのか?放っておいて」とシンに確認する。
一方、三人が部屋から居なくなったあと、山姥切はポケットから携帯型時空転移装置を取り出し、試しに起動させる。しかし、動くには動くものの、本丸へは帰れなかった。
山姥切は静かな
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。