加州達がこよみの国へ滞在し始めて数週間が経過した頃、招待されてカノエ兄達と月影の国。クレアブールへ訪れ、ギルバート王子とお茶をしていた時だった。
僕達はある予感がして、「もしや……」と互いの顔を黙って見た。カノエ兄は「それで、その後はどうなったんだ?」と聞き、ギルバート王子は話を続けた。
僕はこよみの国へ帰った後、その話を早速城にいる今剣に話してみた。
今剣は「ほんとうですか!?」と驚くも、うーんと視線を逸らして考え始める。
僕が言うと、今剣は「はい!」と元気よく笑顔で返事をした。この城に滞在している間、今剣は暇だからと、自ら従者のお手伝いをしたり、掃除をしたりして城の皆と仲良くなっていた。何故か、僕の父さんとも。
父さんには今剣の正体を教えていないけれど、「なんだか、不思議な子だ……。容姿や口調は幼い人間の子供のようなのに、“人”と話している気がしない。まるで、自分にしか見えていない精霊か何かと話しているようだ」と、父さんが言っていたのを覚えている。
────────今はまだ、秘密だけど。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。