第7話

五話 名前 カノエ視点
213
2022/02/21 15:24
俺は加州を連れ、自分の城へと戻る。
その際に「男だらけで暑苦しいかもしれないが大丈夫か?」と、念の為聞いておいた。
だが、加州は「問題ないよ。俺の居たとこ男所帯で暑苦しいのは慣れてる」と笑う。
加州清光(極)
加州清光(極)
にしても……街、凄い活気だね。王子がどんな事するかよく知らないけど、大変じゃない?
カノエ
カノエ
楽では無いが、この国をもっと良くしていきたいからな。民の為にも、自分の役割は全うするつもりだ
加州清光(極)
加州清光(極)
へぇ……。にしても、王子とお城って聞くと、“洋”なイメージがあるけど……この国のお城は形や雰囲気に既視感あって落ち着くな
カノエ
カノエ
そうなのか?
加州清光(極)
加州清光(極)
俺が居た場所も屋此処みたいに“和”の城になってんの。ちょっと変わった場所にあるけど……
カノエ
カノエ
変わった場所?
加州清光(極)
加州清光(極)
人が簡単には見つけられないような場所、とでも言っておこうかな
城についたあとも、中廊下を歩きながら加州と話をするが、不思議な青年だ。異世界から現れたからなのか、謎が多いからなのか、街を歩く青年達とは何かが違う。上手く言葉では表せないが。
カノエ
カノエ
この部屋が加州の部屋だ。城にいる間は自由に使ってくれ。それと、何かあれば従者や俺に遠慮なく聞いてくれ
加州清光(極)
加州清光(極)
うん。ありがと
ふと、加州が帯刀していた刀を大事そうに握るのが視界に入り、「その刀は大切な物なのか?」とつい聞いてしまう。
加州清光(極)
加州清光(極)
……この刀は俺の“心臓”だよ。
なーんてな
比喩と捉えるのが自然かもしれないが、何故か俺にはそんな単純な話には聞こえなかった。
カノエ
カノエ
刀には詳しくはないが……よく見れば鞘の色合いがお前と同じだな
加州清光(極)
加州清光(極)
確かに、赤と黒ではあるけど
カノエ
カノエ
人によっては、自分の造った物や大事にしている物に名前を付けたりするみたいだが、そんなに大事にしているなら、名前もあったりするのか?
俺の問いに、加州は「何の勘か知らないけど、その表情だと無自覚か」と苦笑いする。
加州清光(極)
加州清光(極)
あるにはあるけど知ってどーすんの
カノエ
カノエ
単純に気になっただけだ。
言いたくないなら構わない
加州は少し迷ってから「アンタには助けて貰って、世話になるわけだし……いーよ。教えてあげる」と言い、片手に握っていた刀を前に出した。
加州清光(極)
加州清光(極)
この刀の名前は──────────“加州清光”
カノエ
カノエ
お前と、同じ名前なのか?
加州清光(極)
加州清光(極)
覚えやすいでしょ?この刀は俺の一部みたいなもん。他の人には基本的に触らせないし、悪いけど持ち歩かせてもらうよ
カノエ
カノエ
そこまで言うなら……持つ分には構わないが、気を付けろよ。じゃあ俺はこれからやることがあるから失礼する
最後にそれだけ言って部屋から出ていくが……不思議な青年だ。

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