明日は12月24日。私には子供の頃のように
クリスマスで喜ぶ気力がかけていた。
なる訳ない鈴の音に耳を傾ける。
でもいくら耳をすまして見ても聞こえるはず
なんてないのだから
哀はスマホを手にし、通知を開くと
驚いた表情をしぬがらも嬉しそうにニコッと笑った
荷物をまとめてお店を後にする。
私は微かにホッとした。友人が安心した顔に
心が落ち着くようになったからだ
店を後にした私はおおきな橋を渡り、遠くに
見える大きな観覧車を眺めた。
明日はクリスマスイヴ…。
友人のように一緒に過ごす相手はいないけど
もうその寂しさとはお別れしたの。
スマホのカメラを起動し、向こうに見える
観覧車を撮影してその場を後にした。
…投稿完了と。
街中はイルミネーションとクリスマスの
曲と共にサンタクロースが飾られている。
…いいクリスマス、なんて知らない
無意識に歩いていた先には街の景色が一気に
見物出来ることで有名な場所だった。
ここ、3年ぶりに来たけど…人が少ないのは
前も変わらず何だなぁ…
展望台の中はクリスマスツリーが大きく
飾ってあって、周りは近くの保育園の子達が
描いたサンタクロースのイラストが
たくさ貼ってある。
松ぼっくりに飾り付けしたり、大きな人形を
作ってみたりと作品が並べてある。
一つ一つ名前が貼られていたり、掘られていたり
まるで思い出を忘れないようにする為に…。
子供たちの作品を見ながらエレベーターに
乗り込み、目的の階のボタンを押す。
エレベーターは乗り込むと奥がガラスとなり
外がみれるように作られている。
ガラスに触れると、とても冷たい。
チンと鳴り、目的の階に到着すると薄暗い
部屋がまっていた。
こんな寒い日なんだもの。人なんて来ない
だから暖房がついた階で1人長々と
外の景色を堪能出来るのだ。
ガラス張りになっているから、外の景色が
見物できるようになっている。
あぁ、道路を走る車のライトが流れている。
皆家に帰って家族や友人、大切な人とこの夜を
笑いあって過ごすのかな…
ゆっくりと動くエレベーターから外を眺め
チラチラと白く光る雪が降るのを見つめるだ。
部屋から小さく流れるクリスマスソング
…真っ赤なお花のトナカイさん、、
もう大人だから難しいけど…
ピロンッ
哀からメッセが来てる…
…ためらった。
家族とは離れて暮らしてるから会わないし
家族にも他の友人らにも今日は別の人と
過ごすんだって嘘をついてしまったから
顔に出てたんだ、恥ずかしい
一緒に過ごす人なんて、、もういないよ
嘘ついてごめんね
その時、エレベーターの開く音が聞こえてきた
あまり人に会う気はしないし、、
隠れようかな…
私の後ろから名前を呼ぶ声、振り返ると
知ってる顔があった。
背の高いスーツを着込んだ男性は
私の小学校の時の同級生だった
2人の距離はわずか2m
距離を取らずとも、この位置が私たちの標準
つい、賞品という言葉につられてしまう…
凛斗が私の目の前にチケットを差し出す
寂しい時間を寂しくない時間にしてくれて
ありがとう、、、
この雪の降る中、冷たく沈んだ私の気持ちは
誰にも分からないんだと思っていた。
友人たちからのメッセも全然気分が上がらず
嘘偽って反応していたことを深く反省する。
暖房のきいた展望台は暖かい。
いや、それ以外にも暖かいものがあったかも
しれない…。でもそれは分からないままでいい。
嬉しい気持ちをくれて、ありがとう…
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《今回の小説内容》
高校は卒業している設定で何年後かの
未来へと進みます。
社会人となった主人公は人に対しての
想いを忘れかける中、ある人に久しぶりに
出会って気持ちを取り戻すお話です。
《今回のメンバー》⇩『予想と妄想』⇩
世奈・高校卒業後、製造業に就職して4年目
哀・高校卒業後、調理専門学校に入学
卒業後は母校(小学校)の調理師のして2年目
詩音・高校卒業後、アニメ専門学校に入学
卒業後はゲーム会社に就職
アプリ等のキャラを描くイラストレーター
として活動を広げている
凛斗・世奈とは小学校の同級生。高校卒業後
コンピューターの専門学校へ
卒業後はエンジニアとして会社に就職
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。