side:五条
それはお前のものじゃねぇ、そう言いたかった。
だけどそんなことを言って余計コイツの気を悪くしたら
アイツに矛先が向くかもしれない
昨日、そう傑と話した。
何が引き金になるかわからない
故にどんな些細なことでも用心しようと。
だから俺は、
奪われた服を奪い返した、それだけだった
__ ガラッ
その時教室のドアが開き
後につられて自然と顔がそちらに向く
俯いたアイツが教室に入ってきた
何故か、アイツの纏う空気が思い。
一瞬髪の間から覗いたアイツの目と目が合って
手元に視線が向く。
アイツの目に驚きの色が浮かぶが、
すぐにいつも通りの読めない瞳に戻って
俯いたまま教室の隅にある座席へと着席した
相変わらず下手くそな日本語で2人に挨拶を返すが
傑と問いかけには答えないままだ
2人が心配して声をかけているのに
返事をするどころか顔を上げようとしない。
はあ、めんど。
彼女の前にきて大きなため息を吐いて
顎を掴んで顔を上げさせようとした時、
彼女は自分でバッと顔を上げた。
硝子がそう問うがそれにも答えようとしない。
俺ら3人はそんな彼女の顔をただ唖然と見つめていた
彼女の頬に赤黒い大きなアザがあった
白い肌によく目立つ。
口の端と目の上には赤く血液みたいなのがこびりついていて
多分切れてる。
そして頬と傷口は腫れていた
ボソリとした呟きを硝子が繰り返すと
小さく顎を引いて頷いた
その表情も無で彼女が今どんな感情なのか
痛いのか、苦しいのか、何を思っているかわからなかった。
横から口を挟んできた姉の言葉に
コクリとまた頷いた
硝子は姉の横を通り過ぎて彼女にそう言うと
彼女も大人しく硝子の後に続いて保健室に向かった
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。