第35話

さんじゅうに
1,975
2022/09/18 03:24


side:YOU









まだ口の中に残るあのふわふわな食べ物と



いちごの甘い香り。



初めて食べた、とても美味しいと感じた



いつも家で出されているパサパサでカビの生えた



パンよりもずっと美味しかった



… でも、すこし量が多かった。



いつも1日に一回半分のパンと水しか出されず



胃の収縮している私にとって
















Y O U
ぱん、けーき …… 















今日食べた食べ物の名前を口にしてみる



五条くんはスイーツだと言っていた



スイーツというのは、どれもあんなに美味しいのだろうか?

















Y O U
…… ただいま、も … どりましたっ















失敗作の私は家の裏口からそっと入る



立てかけの悪い引き戸を閉めて



小さな声で帰りの挨拶を告げると、



奥の方からドスドスという足音が聞こえてくる

















お前!!今日は学校にいなかったそうじゃないか!任務か??まさかサボったのか!!!
Y O U
っ、あ、… いえ、















父の手には長い鞭が握られている



… ああ、これから殴られるのか。



そう思って私は大人しく地下の部屋に行く



狭くて、暗くて、寒くて、錆びた匂いが鼻を通る

















なんなんだその格好はっ!!髪も服も失敗作のくせに!!!!
Y O U
や、… いやっ、やめてくださいっ …!
口答えするんじゃない!!脱げ、全部脱げ!














せっかく五条くんや夏油くん、硝子ちゃんが選んでくれた服を



傷つけられたくなくて全て脱ぐ


















失敗作が生きかされているだけでもマシだと思え。
Y O U
ごめ、なさい …















五条くんと過ごした時間を、



楽しいと思ってしまった。



夏油くんや硝子ちゃんを友達だと思ってしまった



こんな本来日の当たることを許されない私は、



彼らと一緒に過ごしてはいけないんだ



助けを呼ぶことも許されない

















Y O U
ふっ、… ぁ … ごめ、なさ …っ














だって私は失敗作なのだから。














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