先生の話に耳を傾けながら、板書する。
…的場くんと話さなくなって約1週間。
私はいつものように一人で勉強に励んでいた…訳ではない。
…この通り、キラキラした方々の一員となってしまった。
以前一緒にカラオケに行った人達と、星那ちゃんを通して仲良くなり、今ではよく一緒に行動するようになった。
まだ名前を呼ばれるのは少し慣れないけれど、それでも一緒にいてとても楽しいと思える人達だ。
ただ…
隣から声が聞こえて、思わず振り向くと…
隣に居たのは、的場くんだった。
的場くんは、私から目を逸らし、反対方向に歩いて行こうとする。
星那ちゃんが的場くんは腕を掴む。
…あの日。
私は、的場くんに罰ゲームで告白されたと知った瞬間…的場くんのことが好きなんだと自覚してしまった。
私はなるべく笑顔でそう言う。
的場くんに手を引かれて走り出す。
…あの時みたいに。
土下座をするかの勢いで謝る的場くんに声をかける。
もしかして…まだ騒がれている状態で話しかけたら、本当に付き合ってるって噂が立ってしまうから…?
的場くんが私の目をじっと見つめる。
的場くんは、それだけ言って帰って行ったーーー
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!