第8話

ちっぽけな悩み
50
2021/07/29 09:00
放課後、瀬戸くんと一緒に学校の図書室に来た。
今日はテスト期間中なので、いつもより沢山の生徒が来て、勉強している。
瀬戸くん
瀬戸くん
…席埋まっちゃってるね
梨杏
梨杏
そうだね…あ、でも奥の部屋なら空いてるかも
瀬戸くん
瀬戸くん
?奥の部屋?
梨杏
梨杏
こっちだよ
初めて来る人はなかなか気づかない、奥の机のある部屋に案内する。
瀬戸くん
瀬戸くん
へぇ、こんなところあったんだ
ここなら結構空いてるね
梨杏
梨杏
うん、廊下の騒音とかも聞こえないし、静かに勉強する穴場なんだ
私はいつも、テスト期間に入るとこの図書室の奥の部屋で勉強をする。
瀬戸くん
瀬戸くん
いいね、今度から僕もここに勉強しに来ようかな
梨杏
梨杏
うん、是非
瀬戸くん
瀬戸くん
よし…じゃあ勉強しよう
早速世界史教えてもらってもいい?
梨杏
梨杏
もちろん…!
そして、私達は順調に勉強を進めた。




梨杏
梨杏
……
瀬戸くん
瀬戸くん
…あのさ、ちょっと雑談してもいい?
梨杏
梨杏
え、あ、うん
瀬戸くん
瀬戸くん
杉崎さんさ、最近あんまり元気ない?
梨杏
梨杏
…え?そんなことないと思うけど…
瀬戸くん
瀬戸くん
…僕が思うに、からだと思うんだけど
梨杏
梨杏
あの事件って…的場くんに嘘の告白されたこと?
あれはもう大丈夫だよ
瀬戸くん
瀬戸くん
そうじゃなくて…それまでは結構仲良かったのに、その時以降的場と話してるところ見ないから
梨杏
梨杏
…多分、私のこと嫌いだからもう話したくないんじゃないかな
瀬戸くん
瀬戸くん
…え、いやむしろアイツは…
梨杏
梨杏
…友達って思ってたのも、私の独りよがりだったのかな
瀬戸くん
瀬戸くん
…っ、杉崎さん…
思わず、手で顔を隠す。
きっとこのままだと涙を流してしまう。
その時…
ふわっ、と頭に温かい感触を感じる。
瀬戸くん
瀬戸くん
…始まりは嘘の告白だったとしても、きっと的場も杉崎さんのこと友達だと思ってたと思うよ
梨杏
梨杏
…え…?
瀬戸くん
瀬戸くん
僕はアイツじゃないし、ハッキリしたことは分からないけど…嘘の告白をきっかけに杉崎さんと仲良くなりたかったんだと思う
瀬戸くんが私の頭を優しく撫でてくれる。
梨杏
梨杏
…本当に、そう思う?
瀬戸くん
瀬戸くん
もちろん
杉崎さんからその気持ちを伝えれば、上手くいくと思うよ
瀬戸くんが優しく微笑む。
梨杏
梨杏
…瀬戸くん、ありがとう






そして、週末。
的場くんのお家でみんなで勉強する…予定だったんだけど…
的場くん
的場くん
…は?杉崎さん以外来れない?
梨杏
梨杏
私も聞いてびっくりしたんだけど…みんな他の子と急にカラオケで勉強会することになったらしくて…
的場くん
的場くん
あいつらがカラオケで勉強会はまだ分かる
…なんで瀬戸まで来ないの?
梨杏
梨杏
瀬戸くんは…妹さんが発熱しちゃったみたいで、自分も風邪感染ってたら危ないからって…
的場くん
的場くん
…明らかに偶然とは思えないんだけど…
まあいいや、杉崎さんだけなら散らからないし、どうぞ入って
梨杏
梨杏
…お、お邪魔します…
すごく立派なお家だね
目の前にそびえ立つ、真っ白で清潔感溢れる大きな建物は、まさに『豪邸』と呼ぶに相応しい大きさだ。
的場くん
的場くん
…親父がちょっと大きい企業の社長でさ
まぁ中は普通の家だから
確かに、的場くんの言う通り、思っていたより普通だった(明らかに広いけど)。
召使いのような人は見当たらないし、身近にあるようなメーカーの家電も沢山ある(サイズが桁違いだけど)。
そして、階段を上って3階に着いた時、的場くんの足が止まった。
的場くん
的場くん
この正面にあるのが俺の部屋
飲み物取ってくるから先入ってて
梨杏
梨杏
あ、うん、ありがとうございます…!
的場くんが慣れた動きで階段を駆け下りていき、私は的場くんのお部屋に入った。
…きっとみんな、本当は私達が本当に仲直りするためにこんな機会を作ってくれたんだよね。
…その期待に応えられるように、頑張らなきゃ。
私は、拳を強く握った。

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