ある、月曜日の事だった。
放課後、部活の無かった彩寧ちゃんと私は、昇降口へと向かっていた。
教師も生徒も部活か下校で出払っている中、私と彩寧ちゃんはさっきまで教室の清掃をしていた。
別に違反の罰…では無く、急ぎの用がある人の代わりに親切心でやっていただけだった。
廊下を歩きながら、彩寧ちゃんに謝る。
彩寧ちゃんは、私が一人で掃除を代わってあげているのを見かねて、手伝ってくれたのだ。
それから、少し話をしながら歩いていると、ふと名前を呼ばれた。
私が振り返るのと同時に、バシャッっと水がかかる音がした。
彩寧ちゃんが慌てて私を呼ぶ声と、水がポタポタと滴る音が、廊下に響く。
………………冷たい。
前を見ると、もう私に水をかけた人は居なかった。
でも、水が完全に私にかかる前、少し見えた顔は、私に掃除を代わってくれないかと頼んできた人だった。
青ざめた顔で、彩寧ちゃんが言ってくる。それに対し、私は笑顔で言う。
これが夏服ではなく、冬服でよかった。
私が動いたら、他の所も濡らしてしまう為、私は動かないでいた。
その後、彩寧ちゃんは走って戻ってきてくれた。流石陸上部……そんな事言ってる場合じゃ無いけど
そう言って彩寧ちゃんは私のジャージと、タオルを差し出してくれた。
そう言って私がタオルで水を拭き取っている間、彩寧ちゃんは辺りに飛び散った水を拭いてくれた。
ジャージを来た後、私も拭くのを手伝った。教師は会議か部活で、幸い何もバレなかった。
________。
帰り道、彩寧ちゃんは随分と機嫌が悪かった。
結構な大声で、私に水をかけた人の悪口を言ってくる。
よっぽどムカついているのか、いつもより少し口の悪い彩寧ちゃんは、私の家に着くまで、ずっと愚痴を言っていた。
そう言って手を振り、私は家に入った。
彩寧ちゃんの前では、平気なフリをしたけど、こんな事されるのは初めてで、気が動転したし、少し怖かった。
もう彩寧ちゃんには心配をかけてしまったけど、からぴちには心配をかける訳には行かない。
出来れば、みんなに余計な心配はかけさせたくない。
だから_______
心配をかけないように…気付かれないように…みんなの前では、平然を装っていようかな。
✄------キリトリ------✄
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!