雨でジトっとした七月のはじめ。
みんなは動画作成に奮闘中。
私は枯れてしまった紫陽花を凝視中。
……なんてね。
曇天の下、縁側で膝に頬ずえをつく。
全く呼ばれない訳でも無いが、やはり皆より頻度は少ない。
草花に付いた雫を見ていたら、何故か作りたくなった。
手を伸ばして、徐に立ち上がる。
そのままキッチンに直行。
記憶の曖昧なまま、戸棚を開け出す。
手を伸ばして目的のものを取る。
もう一つの戸棚を開けて、奥から出来るだけそこが丸い湯呑みを取り出す。
キッチンに十三個の湯呑みを置く。広くて助かった。
それから鍋に砂糖、片栗粉、水を入れて火にかけながら混ぜる。
カシャカシャと音を立てながら混ぜる。
鍋を手に取って、湯呑みに入れていく。
全部に少量入れ終わったら、食紅を垂らす。
ブツブツとみんなの名前と色を言いながら食紅を入れていく。
生地が固まらないうちに、餡子も入れていく。
そしてもう一度上から生地をかける。
全部にラップをして冷蔵庫に綺麗になおす。
腰に手を当て、満足感でふぅっと息をする。
すると、リビングのドアが開く。
そりゃあ、冷蔵庫の前で満足気にしてたら誰だって不審に思うよね。
見られたのが少し恥ずかしくて、スっと手を直しながら言う。
ヒロくんは笑って「そっか」と言った。
着ていたエプロンを棚のフックにかけて、ヒロくんと一緒に上に上がって行った。
撮影終わりの休憩時間に期待して、いつもよりぴょんぴょんと階段をのぼった。
✄------キリトリ------✄
閲覧ありがとうございました✿゚❀.(*´▽`*)❀.゚✿


編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。