六月二十八日の夕方。
私は急いで家へと帰る。
早くみんなを祝いたいからだ。
本当は朝に祝いたかったけど、私が起きている時間はまだみんな起きていない。
クラッカー音で起こそうかとも思ったが、無理があるし目覚めが悪そうでやめた。
今日は、みんなの送り迎えは断った。一周年の動画撮影もあるだろうし。
小走りしながら家に向かう。
「はーい」と返事をして、自分の部屋に上がって行く。
九時……って事は夕飯食べてからかぁ
棚に直しておいたクラッカーをポケットに仕込んでリビングに降りる。
エプロン着てるから多分仕込んでるのは見えない……。
キッチンで冷蔵庫を見ていると、のあさんがそう言ってくれた。
四人でキッチンに立つ。広いから結構大丈夫。
一周年だから、少し豪勢に作りたい。
そう思っても、急がなきゃだから気が引ける。
私の考えを汲み取るかのように言う。
キッチンに食材を切る音や炒める音が響く。
それと同時に、パタパタと私達と機材を運ぶみんなの足音が聞こえる。
キッチンカウンターに手を伸ばして二人がそう言う。
二人のやり取りに笑いながら、うりにお皿を渡してテーブルに並べるように頼む。
それから数十分後、やっと料理が出来た。
それからみんなが自分の席に座る。
私はそんな中、ダイニングテーブルの目の前に立つ。
私は無言でクラッカーを取り出し、紐を引く。
途端にクラッカーの爆ぜる音がリビングに響く。
そう言っても、みんなは瞬きをして固まっている。
ガタッと音がして、急にじゃっぴがこっちに来る。
何かと思えば、じゃっぴは私の頭をクシャクシャに撫でた。
そう言って得意げににこーっと笑ってみせると、みんなが嬉しそうに笑う。
それから、じゃっぴだけで十分なのに、一斉にみんなにも撫でられた。
頭ぐしゃぐしゃ……。
その後、ご飯を食べてから生配信をした。
その日は一日、みんなに「おめでとう」と言えた達成感と、視聴者さんには出来ない、直接「おめでとう」と言える優越感に浸っていた。
✄------キリトリ------✄
閲覧ありがとうございました✿゚❀.(*´▽`*)❀.゚✿


編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。