私はあなた・エルリック。
アメストリスでは有名なエルリック兄弟の長女である。
ちなみにエドの4つ年上で、現在20歳。
エルリック兄弟の長女と聞いて、オートメイルがあるのだろうと思った人もいるかもしれないが、その通り私も咎の身体を背負っている。右足がオートメイルで、左目の視力が無い。ただ戦闘において眼帯をしていれば、そちらを狙われるのは当然なので、敢えて普通である様に振舞っている。
「エド、アル、泣くなよ…」
「泣いてねー!!」
「じゃあその目から出てる水はなんなの」
「これはっ、汗だ!」
長い戦いの末、アルの身体もエドはウィンリィの為に腕はオートメイルのままだが、足は戻った。姉さんも戻そうと言われたが、私は戒めの為に戻すことはしなかった。
で、今はその兄弟との暫しお別れの時である。
「どうしても行くのかね?」
「大佐まで、泣いたりしないでくださいよ…?
連絡もするって言ってるじゃ無いですか…」
「本当の、本当の本当に、連絡するのかね?」
険しい顔で言われる。おそらく以前何度か連絡を怠ったことを根に持っているんだろう。
「しますします。
大体、私だって名の知れた国家錬金術士ですよ?一人旅くらいさせてください。」
「はぁ…わかった、ならせめてこれを持っていけ。」
渡されたのは焔の錬金術士と言われた所以の、発火手袋。通称パッチン手袋である。
「えっ!いいの!?くれるんですか!やった!」
「君に何かあっては困るからね。恋人として。」
「わーありがとうございます!ていうかいい加減にしないとリザにチクリますよ。」
リザさんという恋人がいるくせに私を口説く大佐にさらっと怒る。
「というか!姉貴!マジでモテるんだから、変な奴に捕まるなよ!ほらアルも泣いてねーでなんか言え!」
「うっ、うぅ…兄さん、だってぇ…」
「わかってるわかってる、ちゃんとたまには帰ってくるから
じゃ、そろそろ行ってくるよ」
またね、と手を振って電車に乗り込んだ。
その瞬間だった、いきなり目の前が光り、私の意識はブラックアウトした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。