「っなんで、今ここで…立ちはだかるの…!?
エンヴィー!!」
機械兵器、パシフィスタをなんとか倒し、新世界へと向かう私達の前に立ちはだかったのは、以前見逃すと言って立ち去ったエンヴィーだった。
「だからァ、立ちはだかってるわけじゃないってば~
さっきから言ってんじゃんー、お姫さんを渡してくれれば逃すってー」
「それで俺たちが渡すと思ってんのかこの野郎!!」
「(ただでさえ大将が迫って来て、急いでる時に…!)…目的は…?」
「「「あなた!?」」」
慌てるクルーに聞くだけ、と言えば相当不安なのか疑心の目で見られた。
「お姫さんにとっても嬉しい事だよ?
向こうに帰してあげる。」
「どういうこと…?貴方にとってなんのメリットもないはず、」
疑問しか湧かずそう返せば、酷いなぁ俺はお姫さんが笑ってるだけで幸せだよ?と笑う。
「まぁどっちにしろお姫さんは帰らないといけなくなる。
鋼のおチビさん達が危ないからね。」
「!!なんですって…!?
どういうこと!?戦争は終わったはず…!何があったのよ…!」
「大総統、キング・ブラッドレイの残党が鋼のおチビさんの子供を攫ったんだよ。」
まぁ僕はあいつ好きじゃないし、どーなってもいいんだけど。お姫さんは悲しむよね?と笑うエンヴィー。
「!!そんなっ…!だって、今あの子は…」
「そう、錬金術が使えない。
弟君の体のためにあげちゃったからね
ね?行くでしょう?お姫さん」
「あなた…っ、おまえっ…!」
エンヴィーの言葉を聞いて、尋常じゃなくあわてる私にキャスは行けと言いたいのだろうが、ローの手前言えないのだろう。
「オイ、エンヴィーとか言ったか?
あなたを連れてくのに条件がある。」
「ハァ…?お前はカンケーないだろ。」
「俺の船に乗ってるんだ関係あるに決まってんだろ。俺も連れて行け。出来ないというならあなたは渡さねえ。」
「「「「えええええ!?!キャプテン!?」」」」
有無を言わさないような口調で言い切ったローに、船員達は慌てる。
「キャッ、キャプテン!でも…!」
「お前らなら俺が少しいなくても大丈夫だろ?それでも心配だってんなら先に出航してもいい。必ずあなたと戻る。
さァ、どうすんだ?嫉妬屋」
「お姫さんだけの予定だったのに…まぁいいけど、船長がいないうちに海賊団が壊されてても文句言わないでよね」
エンヴィーの言葉に船員が悲鳴を上げるが、そんなヤワに育ててねーよとローが言う。
「じゃ、転送するからね…!
戻り方は自分達で調べなよ~」
「お前ら後は任せたぞ」
「エンヴィー、みんなに手ェだしたら本気で嫌いになるから」
うるさいなーわかってるよォというふて腐れた声と共に錬成反応が起こり、目の前が消えていく。
「(きっと怒られるんだろうなぁ)」
これから向こうに戻って、叱るであろう人の顔を思い浮かべた。
「(彼氏がいるなんて言ったら更に怒りそうだわ…)」
そんなことを思いながら転送の間、ローの腕の中で目をつぶった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。