第23話

雨の日に①
659
2021/05/19 14:09

その日はなんとなく嫌な予感がしていた
あの日無くした右足のオートメイルの繋ぎ目がギシギシと痛むような気がして


「オートメイル、整備しよっと」


嫌な雰囲気を誤魔化す為に、靴を脱いでオートメイルの整備を始めた




「あなた~!嵐が来そうだから、手伝って~!」



「あらベポ、わかったわすぐ行くから」



うん!と返事をして出て行ったベポはハート海賊団の航海士で、どうやら嵐を悟ったようだ。
整備していたのを止め、まぁ嵐を乗り切るだけだし、特に身一つでいいやと、靴も履かずに部屋を出た。



ゴォオオオオ!!!



「さすがグランドライン…すごい嵐ね」


「あなた!早くこっち引っ張ってくれ!」


「わかってる!」


ベポの後を追った5分後、凄まじい嵐に見舞われた。
慌ただしく走り回り、ベポの言う通りに船を操縦するみんなよりも私の動きは心なしか重かった。



「っはぁ、(こんな…、豪雨の日だったな)」



帆を引きながら、思うのは何年前になるのか…
でも忘れもしない、あの日の悪夢を



「ちくしょう…、早く切り抜けてよ」


こんな重い嵐は"嫌い"だ


赤い赤いあの絶望が、目に映るようで瞳を閉じた。


ドボンッ!!!!



「な、に?」



その時だった、何かが海に落ちた音がしたのは。



「キャプテン!!!」



どうやらクルーを助けたローがシャンブルズで、船の淵にいたようでたまたまそこに海水が津波の如く襲いかかり、逃げ切れずに落ちた音だったのだ。

クルーが慌てて総出で海を見渡すが、嵐のせいでよく見えない。

クルーに焦りが生じる、こういう時に冷静で頼りになるのはローとペンギン、そして私の3人だった。



「みんな落ち着け!!とりあえずキャプテンは俺が探すから、配置にもどーーーーー!?



あなた…!!!?」



しかし、この時の私は違ったのだ




「っ、ローーーーーッ!!!!」



もう 何も失いたくない
私の大切な物、奪わせない



奪わないでよ
神様



曇天、荒む嵐の中
私はどす黒く濁る海へとその身を投げ出した





ドボンッ!!!!

冷たく私の体温を容赦なく奪っていく、海水に浸りながら必死にローを探す。



「(……!居たっ!)」


気を失っているのであろう、嵐の海に逆らわずその体を弄ぶ様に海の底へと誘われるローを見つけた。
とりあえず持ち前の運動神経でローを掴み海面を目指す。



「っぷはぁッ!!…はっ、はぁっ、」


「…」


海面に出たが、どうやらだいぶ流されたようでハート海賊団の船は見えなかった。
更にまずいことに、ローが息をしていない。
早いところ陸に上がらなければ強いと言え、ローだって人間だ、死んでしまう。



「…っくそ、ぜったい、死なせないんだからっ」


ローが聞いていたら、いつになく弱気だな。と笑われそうな声を出しながら息を整える。

いつも海を渡る用に履いていた靴は無いし、此処はグランドライン。もちろん海王類もいる。

ローを抱え、自分の体にローを括り付ける。



パンッ!

バチチチチチッ!!!


「っはぁああああ!!!」



両手を合わせ、海面を叩く
錬成陣が海面に浮かび、ピキピキと水が凍っていく
そして海水で足場を作った私はそのままその足場を伸ばし、その後も次々と海を凍らせて足場を伸ばしていく。



「はっ、はっ、うあぁあああ!!!(とにかくどこでもいいから、陸に上がれればっ)」



私の必死の錬成の効果もあり、すぐに島が見えた。
そのまま島に突撃するように砂浜にガツンと乗っていた氷の足場を突き刺し、勢いで砂浜に転がり落ちるが、すぐに立て直してローを横にして心肺蘇生を行う。



「お、ねがいっ、目を開けて…!」


人口呼吸をし、心臓を圧迫し、錬丹術
とその工程を繰り返す
自分の腕や顔から血が噴き出すのも気にせずに、何度も何度も繰り返した



「おねがいっ、目を…あけてよ

ロー…!!」


「ッゴフッ…はっ、はっ…」


「!!ローッ!」


なんとか水を吐き出し呼吸が戻ったをの確認して、錬金術でローの服を乾かした。



「此処どこだろ…」


とりあえず近くの島に落ちたのだろうが、どうやら無人島の様でジャングルが生い茂っている。
ローに関しては気絶しているだけで、もう命に別状は無いので冷静に考えることが出来た。



「とりあえず迎えが来るまでは大人しくしとこう…」



両手を合わせて、木を錬成し簡易ログハウスを浜辺に建てた。
作ったベッドにローを寝かせ、火をおこして部屋を暖める。



「明日は、晴れるといいなぁ…」


そう呟いて、自分は仮眠のため火を消して床に蹲った。





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