「トラファルガー・ロー!さっきはよくも同胞を!!」
「ベポ!」
「アイアイ、キャプテン!!」
向かってきた海兵をベポに任せたロー。ベポは機敏な動きで海兵を蹴り倒す。
「アイアイアイアイ~~~!!」
「ぐわああ~っ!?」
「ぐほ…!!何だこのクマ!!」
「アイ~~~~~~~イ!!」
決めポーズをとったベポには拍手を送る。そんな彼女の肩に腕を回したローはオークション会場の方へ足を進める。
「え?どこいくの?」
「あれ、キャプテン戻るの!?」
天竜人の奴隷であろう巨人がこの騒ぎの中でも大人しくその場に座り込んでいた。巨人を見上げていたローはあなたから離れると突然彼の首にはめられていた錠を外す。
「あいつ!!ロズワード聖の奴隷を!」
「どうやって錠を外したんだ!?」
「俺と来るか?海賊キャプテン・ジャンバール」
「…そう呼ばれるのは久しぶりだ。天竜人から解放されるなら喜んでお前の部下になろう!!」
「ククッ」
ローが解放した巨人・ジャンバールは辺りにいる海兵をなぎ倒した。
「半分は"麦わら屋"に感謝しな……」
「アイヤ~~~~~~~~ッ!!アイ!アイ!」
「何て機敏なクマだ!手に負えねェッ…!!」
「アイアイ~~~~~~~~イ!」
「しかし何で熊が言葉を喋るんだよっ!!」
「すいません…」
「なんか打たれ弱いっ!!」
「急げベポ!」
海兵の何気ない言葉に落ち込むベポにローが声をかけると、俊敏に橋を渡り仲間になったジャンバールが追手である海兵たちの時間稼ぎとして橋を壊す。
「うわァ!?」
「アイアイ~~!」
「しまった、橋を壊された!」
「お前新入りだからおれの下ね!」
「奴隷でなきゃ何でもいい…」
走りながらそんなやり取りをするベポとジャンバール。ローたちよりも少し先を走っていたシャチが慌てた様子で進行方向を指さした。
「船長!アレ…」
「…………!?」
ローたちの視界に入ったのは、先程別れたばかりで現在、戦闘態勢をとるキッド海賊団。
そして…
「…………ユースタス屋と…アレは……!」
「「…バーソロミュー・くま……!」」
「何で"七武海"がこんな所に…!!」
"王下七武海"の"暴君"バーソロミュー・くま
「トラファルガー・ロー……!!…"科学者"…あなた・エルリック……!!」
「…!やだ、有名になりすぎちゃったかしら…」
「おれの名も知ってんのか…!」
くまはなんの前触れも無しにローとあなた目掛けて口からレーザーを放つ。
「キャプテン!あなた!」
「ここは"海軍本部"と"マリージョア"のすぐそば。誰が現れてもおかしくはない…!」
「後ろから海兵が来るぞ!」
「手当たり次第か、コイツ!トラファルガー、てめェ邪魔だぞ!」
「消されたいのか。命令するなと言った筈だ。
今日は思わぬ大物に出食わす日だ…さらに"大将"になんて遭いたくねェんで…そこ通して貰うぞ、バーソロミュー・くま…!」
能力を発動するローが飛んだ方向と反対方向へ飛んでくまの攻撃を避けたあなたはローとキッドの近くへ歩み寄り、武器を構えた。
キラーとキッドの仲間のクルーの一人がくまに火炎を発射する。
「どうだ!?黒コゲだぜ!!」
「いえ…効いてないわ」
「!?」
「引っ込め、キッド海賊団!」
あなたが言ったように、くまはたやすく身に覆われた炎を消し去った。くまに向かったシャチとペンギン、ベポ。シャチとペンギンが弾き飛ばされた直後、ベポはくまのひざに蹴りをいれるが、
「痛ァアアー!?硬いー!!」
「「……」」
「ベポー!大丈夫!?」
ローとジャンバールは痛みに悶絶するベポを見て肩をすくめるが、あなたはベポを心配する。くまがベポに殴りかかろうとした瞬間、ローは能力を発動した。
「"ROOM"…"シャンブルズ"」
ベポとジャンバールの位置を入れ替え、ジャンバールはくまの攻撃を受け止めた。
「焦れってェな……こいつならどうだ…!?」
「「!!」」
キッドの能力により肥大した金属の両手がくまに襲いかかる。ジャンバールは間一髪で避けるが、くまはキッドの攻撃により地面にその巨体を埋めた。
あなたは爆風に片目を閉じ、くまへ目をやる。
「フン…!手間かけさせやがって……」
「…!ちょっと、キッド…」
「まだだぜ、ユースタス屋」
体を翻し、余裕そうに歩いていくキッドにあなたとローが声をかけた。
「!?」
「……はぁ、タフねぇ………」
「フン…!まだ喰らい足りねェみてェだな……!」
キッドの背後で飄々と立つくまにキッドは再び金属物を集める。だが、それを許すまいとくまは自分の手にはめていた手袋を取り、キッドへその掌を向けた。
「「!?」」
口から放ったレーザービームとは比べ物にならない威力のビームを発したくま。
あなたはキッドに向けられた攻撃を、咄嗟に両手を合わせ壁を作り塞いだ。
「あなた!」
ドンッ!!バキャッ!!
激しい音を立て、くまの攻撃を相殺した。
「あ~びっくりした…!」
「おお…助かったぜ」
ピュンッ!!!
「「!!」」
そんな会話の中でもくまはキッドとあなたに向かってビームを放つ。ローはあなたを抱え、くまから距離をとった。
その後もくまに攻撃を続けるキッドとクルー。
それを見ていてあなたが異変に気付く。
「…ロー、」
「なんだ、?」
「あいつ、たぶん…人間じゃない…!(ホムンクルスではないけど、人間でもない…)」
「!?なんだと?
…!確か、バーソロミュー屋はニキュニキュの実の能力者で、肉球があるはずだが…」
掌から出るビームを見れば、肉球がないのは一目瞭然。
「これは、私の憶測だけど…あれがもし機械兵器…だとしたら…!」
「すでに大量に生産されている可能性がある…!」
そしてここはマリージョアから近い島…、1体だけとは限らない。
「さっさと片付けるぞ…!!」
「待って!」
「あ…?」
すぐさまカタをつけようと能力を使おうとしたローを止める。
「能力使っちゃダメよ、温存しないと。
ここは私に任せて」
「任せろって、お前…っ」
止めるローの声を無視し、両手を合わせると声を張り上げた。
「全員退きなさい!!!
私が片付ける!!」
「っえ!?!」
「あなた…!?!!」
「あのバカッ…!!!何する気だ…!」
くまの目の前に出ると、繰り出された攻撃を避け、背後に回って合わせた両手をくまへとつける。
バチチチチッ!
バキャッ!!!ゴトンッ!!
「「「エエエエーーー!!!?」」」
「ルーキーの海賊が2団いて苦戦した相手を…」
「一瞬で…!!」
「!やっぱり機械兵器…っ!!」
錬金術の法則である、理解、分解、再構築の"分解"で止めたのだ。
人間であったら…と思っていたが、機械ならば壊しても問題はない。
「ハアッ、壊れたんなら俺は行くぞ」
「ハッ、勝手にしろ」
キッド海賊団もだいぶ疲労した様子で、これ以上は御免とでも言うように去っていった。
「ロー!」
「ああ、わかってる!
てめェら!次が来る前にさっさと出航だ…!!」
「「アイアイ!キャプテン!!」」
その時は、まだ無事に出航できると疑わなかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。