第14話

我、研究を所望す
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2021/02/13 11:50
「ペンギーーーン!!研究費寄越せ~!」



「おっわ!?あなた!?おまっ、身体はもう大丈夫なのか!?」



クザン戦から2日ほど経ち、あの日本来の目的であったローを起こすという任務を一応遂行しに行ったのだ、研究費を貰えるだろうとペンギンを探していた。



「えーと、まぁまだ微妙だけど」



「Σ微妙なのに飛びついてくんな!!傷が開いたらどうする!」


「わかったわかった!とりあえず、研究費頂戴ー!もう島に着くんでしょ?」



まぁお前のおかげで助かったのは事実だしな、と懐から金貨の入った袋を出した。



「ありがとうー!じゃあ準備してこなきゃ!」



「傷が癒えてないんだからあんまり無理するなよ、本当は護衛としてキャスくらい付けたい所だぞ。」



「え、なんで?護衛なんて必要ないでしょ。私強いもん♡」



「お前…少しは船長のお気に入りだって事を自覚…」



「たたたたた大変だァアアアーーー!!!」



ペンギンのお説教が始まるか、という所でタイミングよく現れたキャスは煩い!と1発ペンギンに拳骨を食らった。



「いってー!!いってーよペンギン!」


「叫ぶな!煩い!大体何が大変なんだよ」



「あ!!そうそう!これだよこれ!」


そう言ってキャスが取り出した紙は、ニュースクーから毎回買っている新聞で、その中に手配書などが混ざっている場合もある。
どうやら今回はそのパターンのようで、挟まっていた一枚の紙を引っ張り出せば、自分の顔が見えた。




「え」


「あなた…!?おいこれ…2日前のクザン戦の時か…!?速すぎだろ…!」


「それだけじゃねーんだよ、懸賞金みてくれって!」


その手配書は明らかにクザン戦の時の物であり、懸賞金は1億5000万。
"創世の魔術師" あなた・エルリック
ALIVE ONLY



「ALIVE ONLYだと…!?懸賞金もだが、最初からこれは、異例過ぎるだろ…!?」



「まぁ、何も教えなかったから生きたまま捕まえたいんだろうねー」


「Σ軽いなお前!」


「にしても、"創世の魔術師"って錬金術士だっつの。」


そんな事を話していると、見張り台から島だーー!!着いたぞー!!という叫びが聞こえた。



「あ、やばいやばい。準備しなきゃ」


「待てあなた。今回の単独行動は却下にする。」


「…Σええええ!?なんでよ!」


「お前手配書出てんだぞ!?しかも今日!そして何より傷が癒えてない!キャスを護衛につけようと思ったがダメだ!キャスじゃ力不足だ!」


「ちょ!?ペンギン俺に辛辣!!」



ギャーギャーと言い争っていると後ろから金の入った袋と共に腰をガッシリ抱えられた。



「え?」


「俺がコイツにつく。それで心配は無いだろ?」


「ああ、それなら安心です。よろしくお願いしますキャプテン。」



「えええええ!!」


そして抱えられたまま買い物に出発した。




「で?何を買いに行くんだ?」


「研究材料」


「…大体なんの研究をしてるんだ?」



そうローが呟くと、よくぞ聞いてくれました!とばかりに工程や考察をペラペラと語りだすあなただが、錬金術をよく知らないローな右から左へと聞き流していた。



「今の研究を簡単に言えば、まっ、要はテレポートかな!」



「テレポート?」


ローの能力を見て、体感して思いついたのよ!と笑うあなた。
錬金術は等価交換だから同等の対価がどうのこうこうのと、歩きながら考え出すあなたにため息をついて付き添った。



「随分買ったな、ところで食事は船で食うのに買う必要があるのか?」



「ああ、これから研究に没頭するからたぶん一週間は出てこないからその食事。」



一週間と突きつけられた長い期間に、思わずよくそんな篭って研究出来るなと言った。



「あら?貴方達となにも変わらないわよ?むしろ近いんじゃないかしら?」


「近い?」


「貴方達の冒険心と一緒よ、好奇心が強いのよ」


そう考えると私が海賊っていうのも意外と合ってるのかもしれないわね、ローが科学者でも然り。と笑うあなた。
言われてみればそうだ、俺たちが冒険する探究心とあなたが研究する好奇心は同じ様なものかもしれない。




「あ、おかえりなさい!」



「ああ、今戻った」



「あ、私これから研究に没頭するから、危ないから部屋に入って来ないでね!」



船に戻ってきて、ペンギンにおかえりと言われたあと、研究が楽しみなのかあなたはサッサと自室に篭った。



「えっ、飯も出てこない気か?大丈夫ですかね?船長」


「大丈夫だろ、仮にも成人してんだ。ほっとけ。」



そんな会話をして一週間。
本当にトイレと風呂の時しかあなたは出てこなかった。




「キャプテン~…!あいつマジで出て来ないっスよォオ!」


「科学者ってあんなもんなのか…?」


「あーうるせえ!グダグダ言うな!今日で一週間だろ、もう出てくるだろ!」



グダグダとうるさいキャスやペンギンに一喝した瞬間だった。



ボンッ!!!



「「「!?」」」



あなたの部屋の方から大きな爆発音が響き、その音にさすがに警戒心を抱く。



「キャ、キャプテン…!」



「ああ、行くぞ!」


部屋壊してやがったらタダじゃおかねえ、と思いながらキャスやペンギンと共に部屋へと急行する。



「あなた!!生きてるか!?」


「あなたーー!!」


「ッチ、てめえら退いてろ…!」



音がした割に外見は傷ついていなかった部屋の前で、あなたの名を呼ぶ2人を退かして扉自体を切り捨ててしまおうと刀を引き抜いた時だった。


ガチャッ、



「げほっ!げほっごほっ…」


「あなた!」


「無事だったか~!」



もくもくと上がる煙の中から出てきたあなたは思ったより外傷はなかった。



「ったく、部屋壊してねえだろうな?」



「けほっ、けほっ、うん、大丈夫。二重に壁作っといたから」



「「Σそういう問題じゃねぇよ!」」


なんだ?失敗か?と聞きながら部屋に入れば特に異変はない。




「ふっふっふっふ…成功よ!」


「お!よかったじゃねーか!」



「で?何が出来たんだ?」


ドヤ顔で満足気に笑うあなたに、何が出来たんだと聞けば、瞬間移動の出来る術式が出来たと言った。



「「瞬間移動!?!」」


「そう!キャプテンの技見て思い付いたの!凄いでしょ!」


「で?それはどのくらいの距離飛べるんだ?」


「え?まだ実験してないからわかんない」



キャプテンの問いにきょとんとしながら答えるあなた。



「え?実験って何かを使ってするのか?」



「うん自分で使って飛んでくるー」


「はぁ!?実験を普通自分に使うか!?」


「だってちゃんと使えたら戦闘とかにも使えるかもしれないし、そしたら飛ぶのは人だから安全に飛べるかどうかも、実験しないと」


いやだから、安全に飛べるかわかんねーのに飛ぶの!?とキャスが豪語するが、どうやらあなたの意思は固いらしい。



「キャプテン~!!」


「…はぁ、」


「えー、キャプテンだめ?」


結局のところキャプテンの意見を仰ごうと、3人してキャプテンを見る。





「実験が成功したとわかったらすぐに帰ってこい、それが最低条件だ。」



「そ、そんなキャプテン~」


「やったー!アイアイ、キャプテン!」


「…キャプテン実はあなたの"アイアイキャプテン"好きでしょ」


「うるせえペンギン」



ローが条件付きでOKを出したことでキャスとペンギンからはブーイングを受け、あなたは喜んで準備しに戻った。



「…ほんとに無事に帰ってこいよ…?」


「はいはーい」


「ちゃんと飯食うんだぞ、あと面倒は起こすなよ、それから錬金術は使うなよ」


「わかってるってペンギンママ!」


「Σママ?!?!」


色々と準備をして後は実験するだけとなった。



「無茶はするな」


「アイアイ!じゃ、行ってきます!」



いつも通り両手を合わせ、錬成を開始した。
錬成独特の音と光が迸り、あなたの姿は忽然と消えていた。



「…おお…!」


「すごいな…!損傷もない、これが本当に使えたら…!」


「…フン」



あなたが消えた後のハート海賊団は、あなたの無事を祈って航海を続けた。


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