「…えっと、これはどういう…」
「頼むよ!あなたちゃん!」
次の日、朝ごはんを食べに下に降りればたくさん積み上げられたガラクタ、もとい直して貰いたいもの。
「実は親父さんから、すげー子がいる!って聞いてよ!俺も直してもらいてえんだ!」
男の人を筆頭に私も!俺も!と名乗り出るみなさん。まぁ儲かるし、いいか。と考え部屋を貸してもらいジャンジャン直していく。
「うわぁ!ほんとにきれーに直ってる!」
「あぁ、ありがとうねぇ!」
「いえいえー」
ドッサリと金貨を貰ったがそんなに使えないので半分ほど返した。
その日、情報収集しがてら街をあるいたがあまり収穫はなかった。
「ふぁー親父さん、おはよーございますー」
「おう!あなたちゃん!おはよう!」
寝惚け眼で朝ごはんを食べていると、他のお客さんの話が聞こえてきた。
「港に海賊船が来てるらしい…」
「しかも懸賞金はかなり高額って話よ」
「(海賊船か…下手に襲われるのも面倒だなぁ…悪魔の実っていうのも見たことないけど厄介な能力みたいだし、この島出るかなぁ…)」
朝食も食べ終わり、さっさと退散してしまおうとした瞬間、ガシャン!と音を立てて入り口が蹴破られた。その行動から海賊だと察し、サッとフードを被る。
「おい店主!酒をありったけ出せや!」
「…っあぁ、はい!」
親父さんが酒を出したが、海賊はこんなもんじゃ足りねえ!と机をひっくり返した。
「オイオイ親父!こんなもんじゃ足りねえよ!ありったけ出せって言ってんだ!」
「ここは酒の名産じゃないもんで、そんなにたくさんはないんですよ」
「(…ほんとにこれが高額の懸賞金をかけられた海賊?どう見たって雑魚だ。それとも下っ端で船長が他にいるのか…?)」
どっちにせよ、すごく面倒くさい事態になったと、溜息をついた。
「!オイオイ…ガキンチョが…!今溜息ついたな?海賊ナメてんのか?!コラァ!!」
「ぐっ…!」
グイッと胸倉を掴まれ、被っていたフードがパサリと落ちる。
「!!なんだ、女かよ…にしても、かなり上玉だなァ…
よし、酒はいい。親父、この女もらってくぜぇ」
「な!?お、おい!やめてくれ!その子は関係ないだろう!?その子を離せ!」
親父さんのその態度に腹を立てたのか、うるせえ!と振り上げた手を咄嗟に足を出して受け止めた。
「親父さん、私は大丈夫だから、心配しないで」
「そういうこったな、じゃあまた後でくるぜぇ」
胸倉を掴まれている為、息も絶え絶えにそう言えば親父さんは、あなたちゃん!絶対助けに行くから!と言われた。
別にこんな雑魚くらいわけないが。
「この辺でいいか」
「っう!」
どれくらい歩いたか、森の中でドサリと落とされた。仲間がいなく、人気のない森に連れ込まれた時点で何と無く想像は付くが。
「さぁて、お楽しみと行こうぜ…ゴブッ!!?」
マウントポジションを取った男を目の前に、特に怯える事もなく土を錬成して、そのまま激突させた。
「あーもー、ここ来たばっかで地理わかんないのにこんなとこ連れ込んで、帰れなかったらどーしてくれんのよ…」
「な、なんだ!?お前!?ただの女じゃねえな!?能力者か!?」
「うるさい、黙って。」
ギャーギャー喚く男を、一括して錬成しその辺にあった木に縛り付け、ついでにムカついたのでオートメイルの方で顔面を蹴り飛ばす。
オートメイルの方で蹴った為か男は気絶した。
「はー、こっから戻るのめんどくさ………ぃ…」
「………」
振り返ると、アメストリスでは見た事ない様な凶悪な顔をした野郎がいた。
「!?(えっ!?何こいつ…気配感じなかったわよ!?つかすごい隈…!こわっ)」
「お前、何もんだ?」
ガシリと腕を掴まれたが、こいつに捕まったらやばい!と察し、咄嗟の判断でバックに入れていた閃光弾を叩きつけ、男が怯んだ瞬間に森を駆け抜ける。
「何アレ何アレ!?もしかしてさっきのやつの親玉!?仲間やられたから助けに来たのか!?やっべ、思いっきり蹴っちゃったよー!もうこの島からさっさと出よう!」
びっくりしすぎて思わず思ってた事を口走りながら逃げる。
が、
どーーーーん。
と超堂々と行く手を阻む白熊。
サッ、サッ!と避けて行こうとするが、意外と俊敏で抜かせない。
「えっえっ、なんなのこの白熊…!?
すごい俊敏!熊なのに!」
「熊ですいません…」
「!?!!!?熊が喋った!!!?!
えっ、キメラ?!」
「喋ってすいません……」
「っていうか打たれ弱い!!」
こっちの世界にキメラなんてないはず、だとしたら能力者?どっちにしろ、コイツ抜かせないとあの隈男が追いついちゃう!
「ちょっと、熊さん!そこどいて!」
「えっ、でも俺きみを捕まえないとキャプテンに怒られちゃう」
「!?キャプテン?!って事は…」
「ナイスだ、ベポ」
振り返れば先程の隈男。
「うわっ、追いつかれた!」
「さっきはよくもやってくれたな、修理屋。ベポ、そいつ担げ。仲間にする。」
「アイアイ!キャプテン!」
「は!?!えっ、ちょっと!やめ、白熊さん!やめて!」
抵抗も虚しく、というよりこんな可愛い白熊さんに攻撃なんて出来ない。
担がれた私。
行き先は船。
というかさっきなんか聞き捨てならないことを聞いた様な…
「あの、さっきの人蹴ったの謝るんで離してください。というか、仲間にはなりません。」
「あ?さっきの人?」
「さっき私がやっつけちゃった人の船長なんでしょ?謝るから許して!」
「何言ってる、あいつは仲間でも何でもねえ。ただの雑魚の海賊だ。それと、修理屋お前の仲間加入は決定事項だ。拒否は許さん。」
そう言ってさっさと先に歩いていく隈男。っていうか修理屋って何…?!というかだったら尚更なんで仲間にするの!?
「仲間になんてならないからねー!!」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。