第13話

ヒーロー
1,249
2019/04/30 00:32
フラフラ…って…


風邪だったんだから仕方なくない?


てか、大和に迷惑かけてないし…


むしろ尾白先輩だし…


なんか、勘違いしてない?この子達。


「…あなた先輩には大和先輩がいるのにっ…

二股なんて、最低じゃないですか?」


別の女の子が加えた。


…ん?


大和がいるのに…ってどういうことよ…


二股?


私たち、付き合ってないけど。


てか、


「二股なんてするわけないでしょ。」


私が…


するわけないじゃない…。


「だ、だって昨日、尾白先輩があなた先輩の家に行ったって…

前の日も、一緒に帰ったって、聞きました!」


「そ、れは…」


ただ送ってもらっただけじゃん!


ほんとに体調悪かったし…


「見てた子がいるんですよ!

言い逃れできませんよっ!」


はぁ…なんなの…


「そーね、言い逃れも何も、事実だけど?」


隠そうとも思わないし、いけないことでもない。


根本的に間違ってる、てか勘違いしてるからこういう誤解が生まれるんだよー…


「やっぱり…最低です!

自分でもそうお思いになりませんか!?」


「尾白先輩が好きなら、大和先輩を自由にさせてあげるべきですっ!」


次々に出てくる言葉をいちいち受け止めてられない…。


疲れる…。


「あのさぁ、とりあえずまず言わせてもらうけど、私、大和と付き合ってなんかないから。」


「そんな嘘、通用するわけ…っ」


「付き合ってねーよ、別に。」


低い声が後ろから聞こえたかと思えば、振り返ると大和が立っていた。


「大和先ぱ…っ」


女の子たちが急に青ざめる。


「こいつとはただの幼なじみ。

あなたも俺も言ってんだから、本当に決まってんだろ?」


「す、すみませんでしたっ…」


サッと逃げるように帰っていく女の子たち。


その後ろ姿を見送りながら壁にもたれた。


「なに、最初から聞いてたの?

だったらヒーローの登場遅くない?

もうちょっと早く出てきてくれればよかったのに。」


「うわ、ひでーやつ。

せっかく助けてやったのに。」


ま、助かったのは事実。


「そりゃどーも、感謝してます。」


「もっと敬って。」


「調子に乗るな。」


いつもの変わらない会話に、私たちは顔を見合わせて笑った。


ほら、私たちは親友の距離だっていうのに。


みんな何を勝手に誤解して不安になってるのやら。


私は、はぁ、と深いため息をついた。

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