「お疲れ様でーす」
「それじゃ、あとはー…」
夜9時半、バイト終了!
「ごめんね、急遽入ってもらっちゃって…」
タイムカードを押していると、店長に声をかけられた。
「いえ、大丈夫ですよっ」
「はいこれ、あげる〜」
店長からある紙を差し出される。
「え、なんですかこれ。」
「駅前にできたタピオカのお店の割引券!
あなたちゃんにあげるっ」
「え、本当にいいんですか…?」
なんか申し訳ない…
「いーのいーのっ!
今日臨時で入ってもらっちゃったし…
それにほら、若い子はタピオカとか好きでしょ?」
「はいっ、大好きです!」
「よかった!
あ、もしかしてもう行ってきた?」
「あ…はい…でも、また行きたいなーって思ってたのでありがたいです!」
今日マンゴーといちごで迷ったんだよね…
良かった!!
また飲みに行ける!!
お礼を言ってロッカールームで着替える。
はぁーまた明日も…疲れる…
「お疲れ様でしたー」
ホールの人に声をかけて従業員出入口に向かった。
「あ、あなたちゃんおつかれー」
呼ばれて振り返ると、尾白先輩がいた。
「あ、尾白先輩、お疲れ様です。」
「今帰り?」
「はいっ、お先に失礼しますっ」
帰ったらー、ご飯食べてお風呂入って…
あ、明日提出の課題…やんなきゃ…
めんどくさ。
「待って、送ってく。」
「へっ?」
「着替えてくるから待ってて。」
「え、ちょ、あのっ…」
私が何かを言う前に先輩はロッカールームに入っていってしまった。
一人でも帰れるんだけどなー…
「おまたせっ、ごめんね?」
「いやいや!
全然待ってないですっ」
着替えんの早っ
「あなたちゃん帰り道どっち?」
「あ、えと、駅の手前くらいです」
「あー、電車通じゃないんだ?」
先輩は歩きながら言った。
「はいっ
先輩は?」
「俺は2駅行ったとこ。」
「そーなんですね、
あ、じゃあ送ってもらうの駅近くまでで大丈夫ですよっ」
ほんとに、送ってもらうとか慣れないし。
「え、危なくない?」
「何言ってんですかー、この辺治安いいんで大丈夫ですよー」
店員としての心配性はプライベートでも健在だな〜…
尾白先輩はお客さんに対してとっても優しいし、店員に対してだってすごく気を使ってくれる。
「でも、あなたちゃん、いつも8時まででしょ。
それなのに今日9時半までやってたから…怖くない?」
「1時間半なんて、あんまり変わりませんってー」
笑いながら言ってみたけど、そうかー…
確かに、いつもより遅いんだね、帰るの。
どうしよ、不安になってきた。
夕方の真美の話がふと頭をよぎる。
…いや、さすがにこの時間に後輩からなにかされることは無いでしょー…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!