高橋冬弥。
高1の時同じクラスで、まぁそれなりに話してた。
なにかと私に絡んでくるし、一緒にご飯食べたら奢ってくれるし、誕生日にいいものくれたし…
向こうの好意はなんとなく気づいてた。
鋭いんだよね、私。
いや、鋭くなくてもこんなにあからさまじゃ気づかない方がおかしいか。
そして告白されたのは2年生になってから。
入学式の次の日…だったかな。
「クラス、離れちゃったなー」
なんて、昼休み1人で購買にパンを買いに行こうとしてた時後ろから声をかけられた。
まるできっかけを探してたみたいな言い方。
私、早く昼ごはん買いに行きたいんですけど。
そんなことを心の中で思いながらも、足を止めた。
話をしていても何だかよそよそしい。
目も合わないしどうしたのかと思ったらいきなり告白された。
ここで!?って感じだったけど、彼氏いなかったし、気になる人も特にはいなかったし、まぁいいかなって思ってOKした。
時は流れ、付き合って約1ヶ月。
5月7日。
その私の彼氏…
いや、私の元カレと言おう。
冬弥は…
「!?」
狼狽えている。
まさか私がこんな時間に学校にいると思っていなかったんだろう。
そりゃそうだ。
部活も委員会も所属してない、学校帰りはバイトしてるからね。
でも今日は生憎休みなの。
それに忘れ物しちゃった。
だから戻ってきたんだけど。
つか、よく下駄箱で堂々と…
「あ、いや…あの…」
目が泳いで冷や汗をかいて、顔が青白い。
まぁ、そういう反応になるわな。
相当度胸のあるやつか適当なやつ以外はこうなる。
女の子とキスをしてるとこ、彼女に見られたんだから。
浮気するならもうちょっと上手くやろーよ…
「ご、ごめん…あなた…!」
冬弥がばっと私に頭を下げる。
女の子の表情にも困惑の色が見えた。
「あ、オレ…実は…」
なにやら言い訳がましく頭を掻きながら言い始める。
「こいつのことが…好きなんだ…」
“こいつ”、と隣にいる女の子の肩にぽんと触れる。
うわー、もはやいい訳じゃなくて開き直りだ。
逆に尊敬するわ。
私の様子をうかがうような目にイライラ。
そして冬弥は口を開いた。
「だから、あの、…別れて欲しい…」
プツン。
私の頭の血管が10本くらい切れたようです。
「こっちのセリフじゃボケェ!!!」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。