「好きだよ」
私を遮って大和は言った。
そのストレートな言葉に耳を疑い、反射的に大和の方を向いた。
「言っとくけど、今までであなた以外好きになったことないから。」
ドキッ。
真っ直ぐな目。
真剣な表情。
「そ、んな…盛りすぎ…っ」
ありえないでしょ。
大和だよ?
ダメだよ。
ダメ…だよ…
「あなた」
お願い、やめてっ…
「あなた、好きだよ。」
「っ…」
急に顔が熱くなるのを感じた。
…大和だけは、そういう対象にしたくなかった。
ほろりと雫が頬を伝った。
あぁ…
ほんとに…バカだなぁ…
…ずっとずっと、好きだった。
私の隣にずっといてくれたのは大和。
どんなときも、励ましてくれたのは大和。
ふたりで遊んだり、泊まったり、今まで意識したことないなんて、嘘でも言えない。
愚痴も、相談も、全部大和は聞いてくれた。
大和の隣にいるだけで安心できた。
大和は私の…
気づいてた。
この恋に。
知りたくなかった。
こんな気持ち。
持ちたくなかった。
だって…
「怖いの…」
大和は知ってる。
私の今までの恋愛を。
裏切りの連続を。
本当に好きになった人には、裏切られてきた。
それもどうにか乗り越えられたの。
大和という存在があったから。
でも…
大和は…
大和だけは…
手放したくなかった。
離れて欲しくなかった。
好きだから。
心の底から大切だから。
「ふ…うぅっ」
涙は次から次に溢れてくる。
「俺は…あんな奴らとは違う。
絶対に、裏切るなんてことはしないから。」
大和はそう言って指で涙を拭ってくれた。
優しい言葉。
でも、その言葉に確証はない。
そう思っちゃうのが嫌なの。
「大和ぉ…っ」
こんな私を好きにならないで…
友達でいて…
「あなたっ!
信じろよ、俺を。」
大和は私をきつく抱きしめた。
「…っ」
信じてる。
信じたいよ。
でも信じきれないかもしれない。
その不安が大きいの。
私にとって大きすぎるの。
私は…どうすればいいの…?
「あなた。」
名前を呼ばれて顔を上げる。
「あなたは俺のこと、どう思ってる?」
私は…
大和のこと…
「好き…」
あぁ、私からこの言葉が出るのは何年ぶりだろう。
今までで付き合ってきた人達に、言ってたかな。
言葉に出すだけで、こんなに恥ずかしいなんて。
こんなに安心するなんて。
また、涙が零れた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。