第29話

本当に好きな人
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2019/04/30 00:16
「好きだよ」


私を遮って大和は言った。


そのストレートな言葉に耳を疑い、反射的に大和の方を向いた。


「言っとくけど、今までであなた以外好きになったことないから。」


ドキッ。


真っ直ぐな目。


真剣な表情。


「そ、んな…盛りすぎ…っ」


ありえないでしょ。


大和だよ?


ダメだよ。


ダメ…だよ…


「あなた」


お願い、やめてっ…


「あなた、好きだよ。」


「っ…」


急に顔が熱くなるのを感じた。


…大和だけは、そういう対象にしたくなかった。


ほろりと雫が頬を伝った。


あぁ…


ほんとに…バカだなぁ…


…ずっとずっと、好きだった。


私の隣にずっといてくれたのは大和。


どんなときも、励ましてくれたのは大和。


ふたりで遊んだり、泊まったり、今まで意識したことないなんて、嘘でも言えない。


愚痴も、相談も、全部大和は聞いてくれた。


大和の隣にいるだけで安心できた。


大和は私の…


気づいてた。


この恋に。


知りたくなかった。


こんな気持ち。


持ちたくなかった。


だって…


「怖いの…」


大和は知ってる。


私の今までの恋愛を。


裏切りの連続を。


本当に好きになった人には、裏切られてきた。


それもどうにか乗り越えられたの。


大和という存在があったから。


でも…


大和は…


大和だけは…


手放したくなかった。


離れて欲しくなかった。


好きだから。


心の底から大切だから。


「ふ…うぅっ」


涙は次から次に溢れてくる。


「俺は…あんな奴らとは違う。

絶対に、裏切るなんてことはしないから。」


大和はそう言って指で涙を拭ってくれた。


優しい言葉。


でも、その言葉に確証はない。


そう思っちゃうのが嫌なの。


「大和ぉ…っ」


こんな私を好きにならないで…


友達でいて…


「あなたっ!

信じろよ、俺を。」


大和は私をきつく抱きしめた。


「…っ」


信じてる。


信じたいよ。


でも信じきれないかもしれない。


その不安が大きいの。


私にとって大きすぎるの。


私は…どうすればいいの…?


「あなた。」


名前を呼ばれて顔を上げる。


「あなたは俺のこと、どう思ってる?」


私は…


大和のこと…


「好き…」


あぁ、私からこの言葉が出るのは何年ぶりだろう。


今までで付き合ってきた人達に、言ってたかな。


言葉に出すだけで、こんなに恥ずかしいなんて。


こんなに安心するなんて。


また、涙が零れた。

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