第2話

天使病の2人withモトキ 2
929
2018/12/20 07:19
俺達は疲れるまで笑いあった
あなた
あなた
はぁ…こんなに笑いあったのは久しぶり
モトキ
モトキ
俺も
ここ1年この病院にいたからなー
いつの間にか、あなたの話し方が硬くなくなっていた。笑って緊張がほぐれたのだろう
あなた
あなた
えっ…!そんなに…!?
モトキ
モトキ
うん、毎日が暇でさ
あなた
あなた
わたしが来る前は何してたの?
モトキ
モトキ
あー、窓の景色を眺めただけw
あなた
あなた
えーw
そうやって俺とあなたは話していた
寝る時間になり、カーテンをしめお互いベットで寝ていた。
たまたま目が覚め、窓の方に目を移した
…ん?あなたの方からなんか声が…?

体を起こし、耳を澄ますと今度ははっきり聞こえた
あなた
あなた
…う……ぐすっ…ぐすっ…
泣いてる…?
俺はカーテンを開いた。あなたは俺の方に背を向けてベット上で座り込んで泣いていた
モトキ
モトキ
あなた…?
はっとしたように俺の方を振り向くあなた
その目には大粒の涙が溢れていた
あなた
あなた
あ…
モトキ
モトキ
どうしたの?なんで泣いてるの?
どこか痛い?
焦って俺はあなたに質問する、あなたは頭を横に小さく振ると、少し考えるように目をそらし口を開いた
あなた
あなた
わ、たし…聞い、ちゃったの…
あなた
あなた
私達…もうすぐ…死んじゃうんだって…
モトキ
モトキ
え…?
時が止まったように思えた
信じられなかった、だって今だって、こんなに元気に生活できている
でも、本当だとしてもなんであなたが知ってるんだ…?
あなた
あなた
あのね…髪留めを待合室の椅子に忘れちゃって…取りに行ってたら部屋から超えが聞こえて…何かなって聞いてたら…病院の先生が言ってて…
そしてまた涙を零し始めるあなた
そんなあなたを見ることしか今の俺には出来なかった
モトキ
モトキ
…死ぬのか…?俺…達…
頭が混乱して何も考えられなかった
そこにもう1人の俺がつぶやく

「このまま死ぬだけでいいのか?」

よくない!俺もあなたも死にたくない!

「どう頑張っても、死ぬ未来は変えられないかもしれない。だけど、死ぬ前に出来ることは沢山あるだろ?」

そうだ…出来ることは沢山ある…
だったら…
俺はあなたの手に触れた
涙でいっぱいの顔のあなたの目を見て言った
モトキ
モトキ
死ぬのは怖い…
あなただって、俺だってそうだ
だけど、死ぬんだったらやれることをやってから死にたいだろ
あなた
あなた
…!!
あなたはコクリと涙いっぱいの顔で頷く
その涙を俺は指で優しく拭った。始めて触れたあなたの肌の温度が俺の指に伝わっていく
モトキ
モトキ
だったらさ、残りの時間…後悔がないように生きよう
この時の俺の声は震えていただろう
遠くに感じていた「死」が急に手の届くところに迫ってくる、そんな感じ
心の奥底の俺が
「あなたとだったら、死んでも後悔はないだろうな」
と囁いている
なんだそれ、そんなのあなたが俺と死ぬために出会ったみたいじゃないか
心の奥底の俺にそっと反論した
あなた
あなた
うん…!
あなたはそう言って笑った
モトキ
モトキ
とりあえず、もう寝よう
明日からやれること、たくさんしよ!
なっ、と言いながら俺はあなたに笑いかけた
「うんっ!」と言ったあなたを見て俺は
「おやすみ」と言いながらカーテンを閉めようとした
あなた
あなた
あ、モトキ!
モトキ
モトキ
ん?何?
あなた
あなた
…ありがとう
そう言ったあなたの頭を撫でた
モトキ
モトキ
どういたしまして
…おやすみ
あなた
あなた
うん、おやすみ
カーテンを閉め、自分のベットに入り、1人赤面する
ああああ!何キザなことしてんだ俺!おかしいだろ!バカ!バカか俺は!
そう頭で叫びながらあなたの涙で濡れた顔を思い出して胸が痛くなった
俺は羽の触りふと考える
どんな死に方するんだろ…苦しくないといいな…
そんな思いと一緒に俺は眠った

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