第29話

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2019/03/29 03:49
あなたは一度も口を開くことはなく一週間がたった…
スタッフルームでは…
緋山先生
緋山先生
ねえ、白石どうすんの?
全然、口開かないけど…
白石先生
白石先生
こっちが聞きたいぐらいだよ…
ICUでは…
あなたside
なんで生きているのだろう…
なんで助けたの…
なんで死なせてくれなかったの…
冴島さん
冴島さん
あなたちゃん、ご飯食べよ?
お腹空いちゃうよ…
あなた

昼頃、スタッフルームに中村先生が来た。
中村倫也
中村倫也
すみません。藍沢さんいらっしゃいますか?
看護師
少しお待ちください。
………
看護師
藍沢先生、あちらにお客さんが来てます。
藍沢先生
藍沢先生
それ俺じゃなくて白石だ。
白石を呼んでくれ。
看護師は中村先生の方を見た…
看護師
え?あ、わかりました。
…………
白石先生
白石先生
すみません。遅くなってしまって。
中村倫也
中村倫也
大丈夫です。
こちらこそお忙しい中いつもありがとうございます。
…………
白石先生
白石先生
こちらです。
白石はあなたがいるICUに連れて行った。
白石先生
白石先生
目を覚まして一週間経ちましたが、まだ一度も口を開かない状況なので、話しかけても喋ってくれないと思います…
…………
中村倫也
中村倫也
あなた、久しぶりだな。
いきなり来てごめんな。
あなた

中村先生side
本当に何も喋ってくれない。
そんな調子が一週間も続いているのか…
中村倫也
中村倫也
今日は、あなたに話があってきたんだよ。
あなた

中村倫也
中村倫也
ごめんな。辛い気持ちに気付いてやらなくて。俺がもっと早く気づいていられたらこんなことにならなかったのに…
これからは、もっと頼ってほしい。
なんでもいい。小さなことでいい。
だからなんかあったら絶対に相談してほしい。
これ以上、あなたが傷つく姿を見たくない。
この約束だけは守ってほしい。
あなた

少ししてあなたが口を開いた…
あなた

先生…1つだけ聞いてもいいですか?

中村倫也
中村倫也
なんだ?
あなた

なんで私は助かったのだろう…
本当は死んでしまいたかったのに…
なんで生きているのだろう…

中村先生はびっくりした。
あなたは絶対に口を開かないと思った。
思っていた。なのに、なのに、喋ってくれた。
中村先生はそれだけですごく嬉しかった…
中村倫也
中村倫也
それは、あなたが死んでしまいたいと思う気持ちよりも、みんながあなたに生きてほしいって気持ちがはるかに大きかったからじゃないのかな?
中村倫也
中村倫也
生きてほしい。生きてほしい。
どうにかして助けたい。
そんな気持ちでお父さんやお母さん、あなたのことを知っている、お父さんやお母さんの仕事仲間の人が思っていたから。

生きてほしい。生きてほしい。
もう一度やり直して、あなたに楽しい学校生活を送らしてあげたい。
そんな気持ちで俺や、学年団の先生達が思っていたから。

生きてほしい。生きてほしい。
今までの過ちを反省してあなたと学校生活を送りたいと願うクラスのみんながいるから。

こんな人達の存在があなたが死んでしまいたいと思う気持ちよりもはるかに大きかったから。
そして、あなたの心のどこかに
“生きたい”
と願う気持ちが残っていたから
あなた

そうなのかな…

中村倫也
中村倫也
大丈夫。あなたは1人じゃない。
もし、それでも自分は1人だと思ってしまう時があったら思い出してほしい。
誰が何を言おうと、俺は絶対にあなたの味方だ。どんなことがあっても必ず味方だから。
それだけは覚えていてほしい。
…………
中村先生はあなたと話をしたあと、スタッフルームにもう一度行くと、白石がいた。
中村倫也
中村倫也
今日は、ありがとうございました。
白石先生
白石先生
こちらこそわざわざ来ていただいてありがとうございます。
中村倫也
中村倫也
あなたさん喋ってくれましたよ。
大丈夫です。藍沢さんの思いはちゃんと受け取っていると思いますよ。
そのあと、中村先生は何も言わず帰っていった…
そのあと、スタッフルームでは…
5人がそろっていた。
緋山先生
緋山先生
白石、何ボーとしてんの?
白石先生
白石先生
え?なに?ボーとなんかしてないよ。
緋山先生
緋山先生
いやいや、動揺し過ぎでしょ。
藍沢先生
藍沢先生
何かあったのか
白石先生
白石先生
あなたが喋ってくれたんだって。
昼頃、中村先生が来て話できたんだって。
緋山先生
緋山先生
なら良かったじゃん。
藍沢先生
藍沢先生
でも、俺たちにはまだ口開いてくれてない
冴島さん
冴島さん
でも、ずっとなにも口にしてくれなかったのに、昼も夜もご飯食べてくれましたよ。
藤川先生
藤川先生
え?みんなあなたと話してないの?
俺は何回もしてるよ
今日はこんなことしたよ〜とか、面白い話とか
緋山先生
緋山先生
あんたなんでずっと黙ってたの?
もっと早く言いなさいよ。
藤川先生
藤川先生
いや、だって
みんなも話してると思うじゃん。
俺なんかいっつも誰からも相手されないんだし。俺だけとは思わないじゃん。
なんなら心開いてくれたの俺が最後だと思ってたし。
緋山先生
緋山先生
あたしと白石があなたが全然口開いてくれないよねって話、何度も聞かなかった?
藤川先生
藤川先生
ごめんごめん。
全然、聞いてなかった。
今日は何の話ししようかなとかいろいろ考えてたし…
白石先生
白石先生
でも、そんなところが良かったかもね…
白石先生
白石先生
子供心を忘れない、素直に楽しめる姿。
いつから忘れたんだろう…
仕事ばかりで、楽しむ時間なんてなくて家族の時間なんてほとんどなくて…
子供も気持ちなんて考える時間なんてなかった。今日は何の話しようかな…なんて考えたことなかったかも…
藤川先生
藤川先生
なんだよ、いつもは白石だって冴島や緋山みたいに冷たくしてくるくせに…
藍沢先生
藍沢先生
俺も、藤川みたいになれれば良かったけどな…
藤川先生
藤川先生
なんだよ、藍沢まで、
2人とも頭おかしくなったんじゃないのか?
緋山と冴島もいつもみたいに冷たい言葉なんか言えよ。
緋山先生
緋山先生
冴島さん
冴島さん
藤川先生
藤川先生
なんだよ、黙るなよ…
藍沢先生
藍沢先生
小学生のときあなたに言われたことがあるんだ…
藍沢先生
藍沢先生
藤川先生みたいなお父さんっていいよねって
いつも楽しそうで、子供みたいで一緒になってなんでも楽しんでくれそうだよねって…
白石先生
白石先生
藤川先生、気づいてた?
藤川先生は患者さんにも私たちにもいつもいじられて冷たい言葉ばかり浴びせられていたけど、藤川先生のことずっと大好きな人いるんだよ。
藤川先生
藤川先生
俺知らなかったよ…
緋山先生
緋山先生
あなたさ、藤川といるとなんかいっつも笑ってたんだよね…
本当に藤川との時間好きなんだと思うよ。
あなたは本当に藤川先生との時間が大好きだった。
忙しいときでも全然、嫌な顔せずむしろすごく楽しんでくれる優しい先生。
そんなお父さんだったらな…って思うこともあった。

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