第16話

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2019/02/10 10:17

“遺書を書くこと”


あなたは遺書を書いた…


お父さん・お母さんへ
お父さんとお母さんがこの手紙を見てる時にはもう私はこの世にいないことでしょう。
まずはじめに…
“ごめんなさい”
両親が医者であるにもかかわらず、命を絶ってしまってごめんない。本当にごめんなさい。
お父さんとお母さんはこんな子は自分たちの子供ではないと思うかもしれません。
私のことを嫌いになるかもしれません。
それでも、私だけは、
藍沢 耕作さん 藍沢 恵さん(白石 恵さん)が
私のお父さんとお母さんであると思っていてもいいですか?
お父さん・お母さん


だ い す き で す

それからもずっと、好きです。好きでいさせてください。お父さんとお母さんがどんなに嫌でも。


今までずっと言えなかったことを言います。
私は、学校でいじめられていました。
すぐに言えばよかったのかもしれません。
「いじめられてるから助けて」と
でも私は、言いませんでした。誰にも。
その理由は、自分と同じように苦しむ人を見たくなかったから。自分がいじめられていると告白すればいじめの標的がわかってしまうかもしれない。だから私は誰にも言いませんでした。
これ以上被害を出さないために。
周りの人が傷つかなければ、苦しまなければいいと思っていていました。
しかし、私は大事なことを忘れていました。
“自分が苦しんでいると家族が心配する”
ということを。
私は、家族に心配をかけたくなかった。
苦しめたくなかった。自分だけでよかった。
だから、私は隠して続けました。
でも、できなかったみたいです。
ある日、お父さんに言われました。
「あなたがどれだけ嘘をついても体は正直だ、つらいと思えば、苦しいと思えば、体は拒否する」

この言葉覚えていますか?
私は、この言葉を聞いたときに本当のことを言ってしまいそうになりました。これも体の我慢することに対する拒否だったのかな?
もう1つ大事なことがあります。それは、
大切な命を1つ奪ってしまいました。
ある日の放課後、
私は公園に呼び出されました。
そこで見た光景は、子猫がはさみで刺されていました。
「お前、医者の子だろ、助けろよ!」
と言われました。しかし、私は何もすることができませんでした。
「お前、医者の子供なのに何もできないの?
見捨てるの?子猫可愛そ〜、見捨てるんだ、このままだと死んじゃうよ」
と言われました。しかし結局、私はなにもできずに子猫は天国に旅立ちました。
翌日から

“人殺し”

と言われるようになりました。人を殺したわけではないけど、同じ1つの命を見捨てたのは変わりありません。
私の人生はそこからわかっていきました。
過呼吸になり意識がなくなるようになりました。病院で過ごす時間が長くなりました。ご飯を食べても、もどしてしまうようになりました。人殺しと呼ばれる人がご飯など食べてもいいのか。と思うと食べられませんでした。
そして、最近、お父さんとお母さんが仕事をしている様子を見ました。
その時、確信しました。
“私はやっぱり子猫を殺したのだと”
お父さんとお母さんが仕事をしている様子を見ているとやっぱりお父さんとお母さんならあの子猫を助けてあげることができたのだろうと。
私は、毎日少しずつ、生きていくのがつらくなりました。苦しくなりました。
だから私は命を絶つことを選びました。
私が死んだら、いじめをした人がいじめをする事で人の命が奪われることがあると。自分が命を奪ってしまったと気づいて欲しいです。
まだ間に合います。これ以上、人を傷つけないように。苦しめないように。生きる道を閉ざしてしまわないように。生きてほしいと思います。

最後に、
お父さんとお母さんよりも後に生まれたのに。お父さんとお母さんよりもずっと先に死んでしまってごめんね。
この12年間。
お父さんとお母さんのもとに生まれ。
大切に育てられ。
ここまで成長しました。
12年間という短い間だったけど、すごくたのしかったです。
その先、生まれ変わっても、お父さんとお母さんが嫌でなければまた、お父さんとお母さんのもとへ生まれてきたいです。

今までありがとう。
そしてごめんね。
あなたより

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