第4話

1.残念王子に奇跡の再会-3
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2018/09/07 01:42
その人に、高校で再会した。それが宇城くん、宇城朔哉くんだ。

入学式で、列に並ぶわたしに後ろから「よぉ」と気安く声をかけてきた。

暖かい日差しの中、満開のさくらの下で、あの時の人が目を細めて笑っていた。日向坂高校のブレザーにネクタイ姿がやけに大人びて見えた。急に春めいて温度が急上昇した日だった。

宇城くんの頬は、期待か希望か興奮か、はたまた気温のせいだけか、さくら色に上気して見え、それがとても、健康的で眩しかった。
一年の時のクラスは離れてしまったけれど、廊下や体育館でその姿を目にすることはよくあった。なんせ芸能人なみの容姿をしているから、やたらと目立つのだ。

そのうえ運動神経もいい。いろんな運動部から引っ張りだこだったみたいだ。

最終的に自分では最初から決めていたらしいサッカー部に入っていたけど。中学がサッカー部だったとあとから知った。

そんな絵に描いたようなモテ要素満載な人なら、さぞかし女子の黄色い声がまわりをとりまいているんだろうな、と思われそうだけど……。

実際とりまいていたのだ。入学からこっち、最初の一週間程度は。

一年二組にどこぞのタレント事務所の男子がいると、女子の間でまことしやかにささやかれていた。

しかし高校二年で同じクラスになった現在、宇城くんに女友だちは多いものの、彼女と呼べる人はいない。彼女になろうとする子も、知っている限りはいない。

変わっているのだ。圧倒的に。

もう外見の魅力や運動神経のよさを差し引いても、充分おつりがくるくらいに。

“イケメンのもちぐされ”“観賞用”“残念王子”と、不名誉なレッテルばかりをペタペタと貼りつけられている。

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