その人に、高校で再会した。それが宇城くん、宇城朔哉くんだ。
入学式で、列に並ぶわたしに後ろから「よぉ」と気安く声をかけてきた。
暖かい日差しの中、満開のさくらの下で、あの時の人が目を細めて笑っていた。日向坂高校のブレザーにネクタイ姿がやけに大人びて見えた。急に春めいて温度が急上昇した日だった。
宇城くんの頬は、期待か希望か興奮か、はたまた気温のせいだけか、さくら色に上気して見え、それがとても、健康的で眩しかった。
一年の時のクラスは離れてしまったけれど、廊下や体育館でその姿を目にすることはよくあった。なんせ芸能人なみの容姿をしているから、やたらと目立つのだ。
そのうえ運動神経もいい。いろんな運動部から引っ張りだこだったみたいだ。
最終的に自分では最初から決めていたらしいサッカー部に入っていたけど。中学がサッカー部だったとあとから知った。
そんな絵に描いたようなモテ要素満載な人なら、さぞかし女子の黄色い声がまわりをとりまいているんだろうな、と思われそうだけど……。
実際とりまいていたのだ。入学からこっち、最初の一週間程度は。
一年二組にどこぞのタレント事務所の男子がいると、女子の間でまことしやかにささやかれていた。
しかし高校二年で同じクラスになった現在、宇城くんに女友だちは多いものの、彼女と呼べる人はいない。彼女になろうとする子も、知っている限りはいない。
変わっているのだ。圧倒的に。
もう外見の魅力や運動神経のよさを差し引いても、充分おつりがくるくらいに。
“イケメンのもちぐされ”“観賞用”“残念王子”と、不名誉なレッテルばかりをペタペタと貼りつけられている。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。