コロコロと隣のバレー部のコートにバスケットボールが侵入していく。
背の高い大きな先輩の足元にあたって止まったボールを拾い上げて渡してくれた。
ボールを受け取ってコートに戻る。ちらっと後ろを振り向くと、その先輩はサーブを打っていた。
「あの人かっこいーね」
隣でチームメイトが呟いて、たしかにかっこいいなと思った。
練習終わりのシューティングの時間。隣ではバレー部がまだ練習をしていた。こっちのコートに残っているのはせいぜい2、3人で真面目に打ってる人なんてほとんどいない。
先輩の声とともにバレーボールは私の目の前にまっすぐと飛んできた。かろうじてバスケットボールで遮るも、その反動でバスケットボールが額に当たった。
ボールを拾って戻ってきた先輩
そう言って先輩は私の手を除けてぐいっと顔を近づけてきた。
顔が赤くなっていくのが自分でもわかる
そう言って走ってどこかに行ってしまった。本当に大したことないんだけどなぁ
そう言って渡されたのは濡れたタオル
別にそういうわけではなかったんだけど、本気で心配してくれてるみたいなので、水をさすのはやめておいた
そう言って先輩はバレーの練習に戻っていった。その日から私はたまに隣で練習するバレー部の先輩に心を惹かれていった。
2日後、タオルを洗って返そうと思ったけど、先輩の名前もクラスも知らないことを思い出して、同じクラスのバレー部に聞くことにした。
実は、超絶人見知りなのだ。自分から話しかけるなんて、ほぼ無理。
お礼を言って3年生の教室に向かう。
知らない人が多すぎる。どうしよう。無理。
声をかけられて顔を上げると男の人がいた。だれ?
そう名乗った彼は屈託のない顔で笑った。
そう言って教室の扉に手をかけて声を張り上げた。
???
黒尾先輩かぁ。
ちょっと上機嫌でクラスに戻ると、孤爪研磨くんと目があった…気がした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!