挑発的な笑みを浮かべて、月島は教室を出て行った
偶然扉の前にいた日向と私の声が被って、教室内に響く
そう言うなり日向は、かげやまー!!!と廊下を通りかかった影山に突進しに行った。
元気だなーと思いつつ、日向から受け取ったノートに目を落とす
月島蛍、と丁寧な文字で書かれた名前。
はあ、と内心ため息をついてノートを持つ手に自然と力がこもる
見上げるとはるか上に月島の顔があった
月島は、バカとかチビとかすぐ言うけど、そこには完全に悪意があるわけじゃなくて、なんていうか優しさが含まれているというか…
さっきだって、チビって言いながら私が届かなかった黒板の上を消してくれた
そういうところが好きなんだよ…
チラッと振り向くと、月島は山口くんとお弁当を食べていて、ご飯にイチゴミルクを飲む月島が可愛いとか思ってしまう自分は本当に重症だと思う
私が月島に出会ったのは入学してすぐの頃
「(ひそひそ)あの子めっちゃ可愛くない?」
そう囁いていた男子たちの視線の先には超絶美少女がいて、
まあそれが美苑なんだけど
いわゆるナンパをされていた
「あ、新一年生?」
「まだわかんないことあるでしょ、案内してあげる」
最初はうわーモテモテだと思って通り過ぎようとしていたのに、先輩たちはしつこくて、美苑の腕を掴み引っ張り始めた。そこで初めて美苑は嫌がる素振りを見せた
同じクラスであったことは覚えてはいたものの、名前までは知らなかったから少しぎこちない感じになってしまって、端的に言えばバレた。
「ちょっとちょっとこの子は今俺たちと話してるの」
「君も新入生?一緒に校内回ろ?」
正直男の人の力を舐めてた。完全に引っ張られてどうしようと悩んでいたそのとき、
バシャッッ
「うわー水かけられてる」
「かっこわるぅ」
ようやく人の目があることに気がついた先輩方は逃げるように去っていって、
助けてくれたのは嬉しかった、嬉しかったし本当にありがたかったんだけど…
私たちまでびしょびしょに濡れてしまった。でもまあ、
美苑は彼の手を取って目を輝かせていた。スポーツバッグからタオルを取り出して美苑の頭を拭いてあげる彼。
美苑はのちに、
と報告してくるのであった
私も濡れてるんですけどね?!
心の中で突っ込んで仕方なく保健室へ向かおうとすると上からバサッと大きめのタオルが降ってきた。…降ってきた?
見上げると背の高い男の子がこちらを見下ろして、立っていた
それが私と月島の出会い
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!