今、どさくさに紛れて言っちゃえって脳の中で誰かが言った。
恥ずかしくなって目線を逸らす。
戸惑ったような二口の声。
ゆっくりと袖から手を離して、教室を出ようとカバンを手にとってドアへ向かった。
腕を掴まれて後ろに引っ張られた
そう言ってもう一度腕を引っ張られた。見事に二口の腕の中に収まる。顔が見えない
なんでこんなに上から目線なの。それでも、一生変わらないと思っていた距離感がやっと、変わった。
言ってよかった
え?いや、は?
どんどん近づいてくる。もうどうにでもなれ
離れていく堅治の顔はニヤニヤしていて、ほんとなら悪魔に見えた。
え?自分は名前呼ばせといてこっちの名前は呼んでくれないの??
うっ、図星
そう言って颯爽と歩き出す。
もーーーーーーー!!!!
ガタガタと机をかき分けて堅治の腕を掴む。
二口side
振り向いたら上目遣いで少し背伸びをしている水樹がいた。やばい頭回らない。いつもならもっとあしらってから落とすのに、頭が回らない
名前を呼んだだけなのに周りに花が咲いたように笑顔になる。
この人が今日から俺の彼女
〜Fin〜
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。