「俺は何してんのって聞いてんだよ」
冷たく…冷静にそう言い放つ隼人。
その態度に一瞬怯んだのか友也達は1歩後ずさる。
「お、お前に関係あるかよ」
友也の声は震えていた。
「あ?関係ねーよ。だけど見てて気分が悪い。」
そう言い返す隼人。
「調子乗んなよ!」
さっきの隼人の言葉にキレたのか友也は隼人に向かって殴り出していた。
友也は学校でも喧嘩っぱやいし喧嘩は強かった。
だから"危ない"そう言おうとした瞬間…
「せいとうぼうえー」
そう言って華麗に避け、顔のギリギリまでパンチを食らわせる隼人。
その動きは綺麗でスムーズで思わず見入ってしまうほどだ。
友也は腰が抜けたのかその場にへたり込む。
「や、やばいぞこいつ!」
そう言って友也達はその場から逃げ出した。
残された俺と隼人。
隼人は相変わらず無表情のまま草むらに歩き出す。
ゴソゴソと何かを探してる。
「あった」
暫くしてそう呟き俺の方に寄ってくる。
「こ、これ…」
その手に握られていたのは母の指輪だった。
「俺がお前の側に居てやるから。もう逃げんな」
さっきまでとは違い優しい声音の隼人。
そんな隼人の言葉にまた涙をこぼした。
隼人は…俺に光をくれた人。
それから暫くして、俺をイジめていた主犯と
友也達が謝りに来た。
先生が動いたとは思わない。
だって先生は今まで見て見ぬふりをしていたから。
「ご、ごめん…」
気まづそうな顔を見せそう謝られる。
俺もそこまで優しくない。今はきっとこいつらのことを許せないと思う。
だけど良い。
今はそれでいいと思った。
俺は隼人の方に向かった。
そして、こう言った。
「ありがとう」
少し照れくさそうに頬を赤らめていたが
そんな隼人でさえカッコイイと思えた。
隼人は俺の恩人なんだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。