2人は話終えるまで静かに聞いてくれていた。
まさかこんな所で高杉くんと遭遇してしまうとは…
だけど何か…今日の高杉くん様子がおかしかった。
悪魔にそう聞かれ頷く。
その後も引き続き沙世ちゃんの応援をした。
惜しくも準々決勝で負けてしまったが沙世ちゃんはどこか清々しそうな顔をしていた。
そんな2人のやり取りをどこか遠くに聞きながらトボトボ歩く。
頭の中からは高杉くんのどこか切なそうな顔が離れない。
胸に引っかかるモヤモヤを隠して
そう、振り向いて声をかけてくれる2人を追いかけた。
そして、途中でウサギ君と別れる。
今は悪魔と一緒に帰宅中。
何だかんだ悪魔と2人きりになるのは初めてかもしれない。
そう声をかけられる。
いきなり、そう言われるものだから驚く。
珍しく感動するようなことを言ってくれるから
思わず心の声が漏れる。
不敵な笑みを見せながらそう言う悪…隼人。
なぜか落ち着く。
そんな不敵な笑みに落ち着くのも変な話だけど
隼人の隣で隼人の声を聞いているのは嫌じゃない。
そう言って不器用に頭を撫でてくれる。
その行為は偽ってしているものではないと
不思議とそう思う。
今の隼人はまさしく王子様そのものだ。
珍しい隼人に私はそう思った。
何故か隼人と居ると ぽっかり空いた胸が
少しづつ塞がれていくかのような不思議な感覚になる。
隼人と距離が近づけたのも嬉しい。
もっともっと話していたい。
男の子なんて嫌いなはずだったのに
そう思えた。
この時から私の中の隼人は少しづつ変わった存在になっていっていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。